大阪避雷針工業 神戸営業所│第35回BELCA賞

建築物概要 ―Outline of Architecture―
| 表 彰 部 門 | ベストリフォーム部門 |
| 建物所有者 | 大阪避雷針工業㈱ |
| 改修設計者 | ㈱竹中工務店 |
| 改修施工者 | ㈱竹中工務店 |
| 竣 工 年 | 1989年 |
| 改 修 年 | 2024年 |
| 改修前用途 | 事務所、倉庫、社宅 |
| 改修後用途 | 事務所、倉庫 |
| 所 在 地 | 兵庫県神戸市兵庫区入江通1-1-15 |



表彰建築物ならではの取り組み ―Building-specific Initiatives―
「大阪避雷針工業 神戸営業所」において、設計・計画・維持管理等の各段階で実施されている、特筆すべき工夫や取り組みを紹介します。
事務所
1980年代
RC造
減築
大庇
タイル
省エネ
環境性能
LCCO2
愛着

※PDFより抜粋
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選考評 ―Selection Commentary―
本プロジェクトは、新築から34年を経て、ビジネス環境の変化により、新築当初の容積が不要となり、ダウンサイジングの建替えを予定していたものを、その与条件を逆手に取り、70年以上の残存耐用年数を確認した上で、大胆な減築と小規模の増築による改修を行うことで、建物の環境性能、耐震性、空間性能、快適性を飛躍的に向上させた画期的計画である。利用者減に伴う建て替え要望に対し、健全な躯体を活かし新築同等の予算を「減築」と質的向上へ充てた。
特筆すべき点は、断面計画に集約されている。耐震構造の柱や梁、鉄筋の位置の確認をしっかり行い、壊して良い壁床を特定した上で、不要となった最上部の住宅フロアを撤去している。さらに、3層となった躯体に対し、さらに3階の床スラブのすべてと2階のスラブの一部を撤去することで、豊かな階高の執務スペースと、エントランスホールから大きな吹き抜けを通じて開放的に接続されたメインの2階執務スペースを実現している。また、1階部分は、豊かなエントランスホールの創出のために、片持ち上に張り出した床を新設し、建物全体を繋がった空間とすることで事務員と作業員とのコミュニケーション向上を図った。
外壁に目を転じると、従来、近接する周囲の建物との視線制御が難しかった既存外壁面に屋上部分から大きな庇を設けることで、プライバシーを確保しながら、外部環境負荷を大幅に低減し、中間期から夏期まで包含する自然通風を実現、非常に開放感のある快適な屋内空間を実現している。また、開閉式トップライトと居室の窓での重力換気でさらなる冷房負荷削減とともに自然光を採り入れることで明るさを確保した。南面大庇は北面斜め外壁を設備架台である屋根鉄骨と連結させることで構造バランスも整えた。
夏は壁上部、冬は床部と吹出し位置を切り替える空調計画でCFD解析を利用して均一な吹出気流となるよう調整した。以上のような操作により、建替えに比べて、アップフロントカーボン、ホールライフカーボンをそれぞれ、70%、25%と大幅に削減しているとともに、BPI 0.59、BEI 0.4という高い省エネ性能を達成している。
また、デザイン面では、建物主が愛着を持ってこれまで使ってきた痕跡としての既存コンクリート躯体と、新たに挿入した木造による大庇によるコンビネーションが、これまでの記憶を大切にしつつ、未来への環境コンシャスな新たな空間価値を創出することに成功している。
既存躯体の7割を残し再利用する上での、綿密な解体、新築の施工計画を設計段階から施工者が設計者と協議しながら策定し、設計施工一貫のメリットを最大限に活かした、合理的な計画のもとに施工されている。設計の上でも、構造的に既存躯体と新築構造体を確実に緊結するための施工性を考慮したきめ細かな詳細設計が施されている。
以上のような様々な工夫のもとに、従業員にさらに愛着を持って使い継がれる社屋へと再生された。

