立教女学院 高等学校校舎・講堂

第33回BELCA賞 ロングライフ部門

校舎外観
教室
トイレ
廊下
講堂外観
講堂
音楽室

建築物概要 ―Outline of Architecture―

選考評 ―Selection Commentary―

 立教女学院は、1877年文京区湯島で設立された。その後、中央区築地に移転したが、関東大震災で校舎が焼失し、教育の再開を目指し探し当てた土地が、現在の久我山高地であった。米国聖公会からの多大な援助により、1930年に高校校舎と講堂、1932年に聖マーガレット礼拝堂(杉並区指定有形文化財)が建築され、その後約90年の歴史を刻み、地域に根付き、学びと共に人材育成の場として今日まで使用されてきた。

 正門を入ると円形の広いロータリーを囲むように、校舎、講堂、礼拝堂が配置されており、美しく手入れされている木々の緑の奥に、品格ある象徴的な風景が維持されており、周辺の閑静な住宅地とも調和している。90年の間、教育環境の変化や時代の要求に対応し、劣化更新が行われてきたが、さらなる100年に求められる学校建築としての機能・性能を確保するために、今回大規模な改修が行われた。

 生徒が長く時間を過ごす教室では、既存スチールサッシをアルミ+Low-E複層ガラスに改修することで断熱性能を強化が図られているが、既存意匠を踏襲するため、モックアップを製作して細かな寸法やディテールを詰め、既存とほぼ変わらない外観が実現されている。教室内観においても、既存の砂漆喰の剥落対策として、応急措置的に天井が設置されていたが、天井を解体し、砂漆喰を全撤去し、空調機および空調配管を隠蔽することで、創建時の佇まいに戻す努力がなされている。合わせてプロジェクターやWi-fi関連機器の設置などIT化も図られている。

 廊下の改修は、床、壁のテラゾーブロックの健全性を全数調査した上で、剥落防止措置が施され、全面研磨により創建時の姿を再現している。また、配線ルートを確保するための下がり天井を間接照明とし、むき出しで床置きされていた空調機を、空調機内蔵のベンチに変えることで、快適な廊下空間に生まれ変わり、休み時間や放課後に生徒のための新たな居場所が生み出されている。一方、トイレだけは、大幅にレイアウトや内装を見直し、使い勝手良く清潔感のある空間となっている。

 講堂改修においては、隠れていた創建時の格子天井を復旧させる為、大梁から鉄骨支持を取り耐震性の向上を図ると共に吸音・照明・空調吹き出し等の機能性を付加し創建時の意匠性を限りなく残す努力がなされている。 今回の改修により、創建時の佇まいを保ちながら、様々な機能・性能が向上されたことで、確実に更なる100年使い続けられるであろう。そして、現在の生徒はもちろん、卒業生にとっても、いつ来ても、いつ集まってもその時代の自分に戻れる心の拠り所でありつづけるであろう。

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