静岡新聞・静岡放送東京支社

第33回BELCA賞 ベストリフォーム部門

ピロティ
エントランス
1階ホール
コワーキングスペース
リフレッシュルーム
会議室
耐震補強(階段)
エレベーターホール

建築物概要 ―Outline of Architecture―

選考評 ―Selection Commentary―

 丹下健三+都市・建築設計研究所設計による、建物中央の円筒コアより執務空間が張り出す外観が特徴的な本建物は、1967年の竣工以来、静岡新聞社および静岡放送の東京支社機能が置かれてきた。今回の改修においては、テナントビルやホテルへの建て替え案が浮上したが、「東海道新幹線で東京駅に到着する直前に見える一風変わったこの建物は、またとないアイコンである」との判断により、全面改修により自社オフィスとして使い続けられることとなる。本作品は、「山梨文化会館」(第28回ロングライフ部門表彰)にも示された、コアを兼ねた構造体とフロアを分離し、プランニングの自由度を高め、増殖可能としたシステム的建築である。その意味で、ここをオリジナルのまま自社オフィスとして存続させ、かつ時代の要請に応じて全体的に「変わらないこと/変わること」のコントラストを明確にし、保存再生されたことを高く評価したい。また、全国区の大メディアがひしめくこの地にあって、首都東京の一等地に保有するこの建築を維持・延命することの価値を、企業のプレゼンスを持続するという所有者の強い意思の象徴として捉えたい。

 耐震補強計画にあたっては、外観形状を損ねないよう、狭小なコアの内側からの作業性を勘案した鋼板補強を提案している。特殊な架構形式のため、質点系モデルを用いた時刻歴応答解析により弱点を把握し、1階まわりの円筒コア壁脚部の曲げ補強として炭素繊維シートを貼り付け、低層階のせん断補強として曲げ鋼板を分割し適所に設置していることは、技術面・施工面で特筆に値する。

 設備面では、全館照明をLED化、カバー工法による換気窓を設置し中間季節における自然換気で活用し、また二重サッシ化、Low-E複層ガラスの採用等による熱負荷の低減を実現している。また、足元の排他的になりがちな池を街に開いたピロティへの変更やライトアップ等の工夫により、都市景観向上に寄与している。 本建物は1993年、1999年の改修以外にも、小さな補修や修繕を重ね、50年以上使われてきた。その長期存続はこまめなメンテナンスによるものだが、今回のリニューアル後も「100年建築」を目指し、継続的な維持管理を行い次の30年に向けての更新修繕計画が策定されている。 電通本社や中銀カプセルタワーが解体され、周辺環境の新陳代謝もある中で、銀座・新橋界隈のランドマークとして親しまれてきたこの建築を維持継承し続けていくことの社会的・文化的意義は大きい

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