ヒノキ新薬ルスツ山寮(尻別山寮)│第35回BELCA賞

建築物概要 ―Outline of Architecture―
| 表 彰 部 門 | ロングライフ部門 |
| 建物所有者 | ヒノキ新薬㈱ |
| 設 計 者 | 白井晟一/白井晟一建築研究所 |
| 施 工 者 | 大成建設㈱ |
| 維持管理者 | ヒノキ新薬㈱ |
| 竣 工 年 | 1972年 |
| 用 途 | 保養厚生施設 |
| 所 在 地 | 北海道虻田郡留寿都村字泉川645 |



表彰建築物ならではの取り組み ―Building-specific Initiatives―
「ヒノキ新薬ルスツ山寮(尻別山寮)」において、設計・計画・維持管理等の各段階で実施されている、特筆すべき工夫や取り組みを紹介します。
保養所
レンガ
1970年代
RC造
設備改修
省エネ
寒冷地
日常のメンテナンス
登録文化財
ランドスケープ

※PDFより抜粋
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選考評 ―Selection Commentary―
1972年に白井晟一の設計により建設された企業の保養所が、今も、当初のまま保養所として使用されている。建物の長寿命化を実現するには、初期の設計に当たっての十分な配慮、陳腐化等による建物の機能劣化を起こさない建築計画、また、使い手の丁寧なメンテナンス等が必要となるが、本建物はそのいずれに対しても十分な対策が施されている。
まずは、白井晟一氏の原設計において、厳冬豪雪の厳しい自然条件に対し、卓越風向を考慮した上での切妻屋根の深い軒の出や、江別、野幌で製作された外装煉瓦をはじめ、北海道産の風土に根ざした材を積極的に用いた材料選定と丁寧なディテールにより、経年変化によりただ劣化するわけではなく、むしろ趣のでるデザインが施されている。内部空間も、外部の素晴らしいランドスケープと一体となることを意図した、宿泊室のバルコニーや食堂の開口部の配置、各スペースの、ここで過ごす人々に心地よい適切な寸法、プロポーション、存在感の際立つ材料選定により、陳腐化することのない普遍性のある見事な空間となっている。
竣工から50年以上にわたり、オリジナル設計を尊重し、空調・給排水・電気設備には大規模な改修を行っていない。一方で、床暖房の配管を鋼管から樹脂管へ更新するなど、劣化しやすい部分は適切に改修し、長寿命化を進めてきた。日常の維持管理は常駐スタッフによる丁寧な手入れが行き届き、長期修繕計画も周到に策定されていて、省エネや環境への配慮にも努めている。今後も計画的な設備更新と保全体制により、持続的な機能維持と快適な利用環境が期待できる。 このような、素晴らしい建築に対し、建築主は深い愛情を注ぎ続け、具体には、5名の常駐スタッフがプロによる定期修繕のみならず、日常のちょっとした修理を含めたメンテナンスは自ら行うというスタンスで、50年以上、大切に建物を守り育ててきたことは特筆するに値する。そして、ほぼ新築当時と変わらない姿で、長きにわたって、利用者にも愛されており、まさに、ロングライフ部門での受賞に相応しい建物である。

