19回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

NTT横須賀研究開発センタ

所在地 神奈川県横須賀市光の丘1−1
竣工年(改修年) 1972年(昭和47年)・増築1977年(昭和52年)
建物用途 研究所
建物所有者 日本電信電話株式会社
設計者 株式会社NTTファシリティーズ
施工者 株式会社鴻池組
日比谷総合設備株式会社
川本工業株式会社
日本メックス株式会社(改修)
i維持管理者 株式会社NTTファシリティーズ
日本メックス株式会社
 1972年竣工した本建築は、日本の電気通信サービスの世界戦略を背負ったプロジェクトである。1964年の東京オリンピック開催以降、経済の成長・発展、そして生活水準の著しい向上と生活様式の変化に伴い、日本のこれからの情報革新に応えるために、国を挙げて、その先行的研究開発の充実を目指して、NTTの前身である日本電信電話公社が第二電気通信研究所として計画、設計したものである。
 その後、77年には、データ通信、伝送、無線の研究など目的強化するために増築され、さらに、画像通信、衛星通信、自動車電話サービスなど時代の要請にしたがって、改修を経て、今日のブロードバンド、ユビキタス社会、多彩な技術とソリューションを提供する役割を果たすべき課題を未来につないでいる。
 何よりもこの建築に圧倒されるのは、日本の電気通信の分野で国家が背負って、成し遂げなくてはならない使命とその意志を体現している点である。そしてその姿は、三浦半島のほぼ中央部に位置する、日本最高の景勝丘陵地に現れ、あたかも、重戦車のような存在感を示しているのが象徴的である。
 その建築の意志は、すべての部位や構成にも現わされている。大容量のコンピューターのための大空間や大型自動車が通れるほどの機械室の確保と、これから変化するであろう多くの可能性を読み込んで、すべてに亘って、大空間の持つ機能性とその可能性を最大限に生かしている点である。8本のシンメトリーに配されたコアに耐震要素と垂直導線、設備要素を集中させ、コア以外の大空間を研究室、実験室の分節・統合をいとも容易に成せるように、すべての部位でモデュ―ル化している。天井、間仕切り、全面二重床による実験用配線,配管の布設,そして、大空間の構造荷重,剛性なども均等に分布させ、外壁素材のメンテナンス・フリーを考えた耐候性鋼材の使用など、計画当時のこの事業に対する将来の展望と展開が今日にもその意図が明確に示されている。竣工後の空間的なリニューアル(食堂)など、その取り組みへの対応は、今日的感覚をもって見れば、多少の違和感は拭いきれないが、仮にそのような感覚をこの建築に問いかけても、一笑に付されてしまうほどの迫力で跳ね返されてしまう勢いがある。そこには、当時の電気通信事業という国家的課題を解決しなければならないという当時の強い思いや意志の存在が明確に引き継がれているからである。
 建物維持管理に関しては、劣化状況、環境破壊、省エネなどの、観点から評価を行い、中長期修繕計画に基づき実施されている。設備面では、熱源システムの更新、コ・ジェネレーション・システムの採用、特高受変電設備の更改など、主要インフラ設備が、研究ニーズへの対応、老朽化対策として計画的に実施されている。また、太陽光発電装置の導入、LED照明への交換,人感センサーの採用のほか、BEMSによる熱源、CGCの最適化運転による省エネ化にも積極的に取り組んでいる。
この建築は、国家的使命と意志の存在を示して、中間に改修や増築などの変化を受け入れながら、「建築の意志」がぶれることなく、現在にも、持続的に機能し続けている稀有な存在として、高く評価したいと思う。
 
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