18回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

ルポンドシエルビル(大林組旧本店ビル)

所在地 大阪市中央区北浜東6-9
竣工年(改修年) 1926年(大正15年)、2007年(平成19年改修)
建物用途

レストラン・特定企業の歴史資料館・各種学校(改修前:各種学校)

建物所有者 大林不動産
設計者 椛蝸ム組本店一級建築士事務所
施工者 椛蝸ム組
i維持管理者 大林不動産
 大阪は中之島、その東端にある中之島公園の、土佐堀川を挟んだ対岸に「ルポンドシエルビル」はある。中之島周辺の都市景観は、水辺の街大阪の顔である。大きくはないがどっしりとした風格を見せるこのビルの情緒あふれる姿は、対岸からの景観の要になっている。このビルは1926年に大林組の本店ビルとして建設された。当時、最先端であったスパニッシュスタイルの秀逸なデザインは一斉を風靡したものである。爾来大阪の街の変化と共に生き続けてきた。1972年に土佐堀通の向かい側に大阪大林ビルが建設されたため、ビルの機能は企業本社からテナントビルに生まれ変わる。1981年以降は今回の改装時まで、料理学校の校舎として使われてきていたのだが、その間も変わらず立ち続けてきた。その重厚で格調の高い外観は大阪の街の顔として長く市民にも親しまれてきた。2007年には大規模な耐震補強改修工事に合わせて記念的な建造物として保存されることになった。そこに至るまでは、社会の一般的な経済の流れの中で、老朽化したビルを取り壊して新しいビルに建て替える議論も熱心に行われたという。しかし結局、その歴史的な街の顔としての役割を果たそうという強い意志のもと、耐震補強改修が行われることになった。その個性豊かな外観を極力保存するため、外壁のデザインを損なわないよう耐震壁は既存窓の内側に設けられるなど多くの工夫が見られる。B1階〜2階にはこのビルの名前になったフレンチレストラン「ルポンドシエル」がある。もとは向かいの大林ビルにあったのだが、このビルを象徴する存在として移転したものだ。3階は大林組歴史館。会社の110年の歴史とともに、このビルの長い履歴を示すミュージアムである。4階から6階までは従前の通り、料理学園の教室が置かれた。
 そのような変遷に対応して、設備はその都度更新が行われた。事務所からレストラン、あるいは料理教室など換気量、空調熱負荷が非常に多い用途への変更に対して、倉庫を送風機室として利用するなど室内スペースを損なうことなく改修された。空調熱源機器は屋上に設置されており、今後の維持管理及び更新を容易に行うことができる構造である。また内装では、隠蔽されている空調、衛生配管類が今回の内装変更工事にあわせて更新され、今後の長期間使用に耐えうる設備改修となった。また、維持管理に関しては中長期保全計画が作成されており施設の性能の維持を目指している。
 結果としてビルは残った。それも、さらに時代の先端を行く新しさを原動力にして、これからの街の象徴として存在し続けるであろう。 
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