29回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物



熊本県立劇場

所在地

熊本県熊本市中央区大江2-7-1

竣工年

1982年

建物用途

劇場・ホール・文化施設

建物所有者

熊本県

設計者

前川國男建築設計事務所(新築)、椛O川建築設計事務所(改修)

施工者

大成建設梶i新築・改修)、椛蝸ム組(新築)、褐嚥g組(新築)、椛揄i組(新築)、九州電気工事梶i新築)、太陽電気梶i新築)、三建設備工業梶i新築)、鰹纉c商会(新築・改修)、椛蜍エ商会(新築)、三祐工業梶i新築)、鰹ャ竹組(改修)、且O津野建設(改修)、飯塚電機工業梶i改修)

維持管理者

公益財団法人熊本県立劇場
 熊本県立劇場は前川國男氏の設計で1982年にオープンした。コンサートと演劇の2つの大型専用ホールを持つこの施設は、多目的ホールが主流であった当時からすると画期的であったという。
1993年:バリアフリー対応 1998年:自動迫り改修・空調改修 2002年:女性トイレ増設 2003年:演劇ホール照明・音響改修 2010年:車いす対応・駐車場機器更新等 2012年:冷温水発生器更新等の省エネ対応が行われ(約15%のランニングコスト削減・約20%のCO2削減)、2015年にはユニバーサルデザイン・アドバイザーの助言を踏まえトイレ改修など、時代に合わせた改修が行われてきている。
 そして、2016年4月に熊本地震。高架水槽パネル破損やホール照明器具のずれ、床タイル・壁仕上げのひび割れ等の被害があった。しかし、シャンデリア振動対策・舞台機構制御装置のブレーキ2重化などを行っていたため、シャンデリアの振動による天井破壊は防ぐことができた。ただ外壁のPC版の振動幅は大きく、上層部のパネルのずれが生じたという。元設計の形状を守るべく既存PC版を極力再利用して、所有者・管理者・設計者・施工者・PCメーカー・タイルメーカーによる、強い目的意識を持った協力体制がとられた。2017年3月から1年をかけて復元工事が行われ、従前の姿を取り戻している。
 建築に対するリスペクトは、ロングライフを目指す具体的な保全計画に繋がっている。長寿命化を目指す継続的な活動として、2005年には15年後の2020年までの保全計画が策定され、2015年にはその保全計画が見直されて、2076年までの計画が立案されている。さらに熊本地震を受けて、2016年8月にはそれまでの「熊本県立劇場危機管理マニュアル」を幅広い観点から改め、地震訓練や消防訓練だけでなく、テロ対策訓練や情報セキュリティ研修など幅広い危機管理研修が行われている。一方、2013年に国より自治体が所有する文化ホールに関する運営指針の策定が求められたため、2014年には全国に先駆けて「熊本県立劇場運営指針」を策定し、それには将来にわたって地域の文化拠点としての役割を果たすための施策が定められている。運営指針の策定と保全計画の立案、そしてそれらの具体的実行など、関係者によって施設管理に関するPDCAが的確に行われている点は高く評価できる。
 県立劇場オープンの後6年を経た1988年、熊本県では熊本アートポリス構想が始まり、現在もその動きが継続されている。公共建築の存在や使われ方に対する県民の意識が成熟していることも見逃せない。前川國男氏は、「100年持つ建築を創れ」と主張していたというが、その精神を受け継いだ人々の努力は良好な形で続いている。

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