28回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物



福岡銀行本店ビル

所在地

福岡県福岡市中央区天神2-13-1

竣工年

1975年

建物用途

銀行(本店営業部・関連会社)

建物所有者

兜汢ェ銀行

設計者

轄武紀章建築・都市設計事務所(新築・改修)、劾TTファシリティーズ(改修)、鞄建設計(改修)、潟Wーエー・タップ(改修)、 樺|中工務店(改修)

施工者

樺|中工務店(新築・改修)、劾TTファシリティーズ(改修)

維持管理者

兜汢ェ銀行、劾TTファシリティーズ
 本建物は福岡市のオフィス・商業の中心地、天神地区の一等地にある。濃灰色の花崗岩に覆われた格調高い外観は築43年を経過した現在も都心部の景観形成に大きく寄与しており、ピロティ軒下の大空間は公開空地として市民に開放され、都心の貴重なオープンスペースとして時を刻んでいる。また、長期使用を念頭に維持保全計画が作成され、現在もその工程表に則り改修・修繕計画を実施するとともに、2階営業室へのアクセスを改善するためのエスカレーター設置など、時代のニーズに即して機能付加を行っている。
 竣工時と大きく変わっている点は、この建築の最大の特徴である軒下空間の在り方である。2013年に軒下空間をより一層解放的な空間とするための検討がなされた。オリジナルの空間は、周辺道路に対して1.5m〜2mほど高く設定された軒下広場に向かい、階段を徐々に上ってゆくことによって厳かささえも感じさせる彫刻的でフォーマルな空間であり、都市の喧騒からの隔絶を図った感もあった。改修を行い、階段をスロープへ置換したことによってスムーズに軒下広場にアプローチできるようになり、街路空間との繋がりが強まった。また、元の正面玄関の円形風除室はコーヒーコーナーに改修され、空地にはオープンカフェや「一人一花」運動としての花壇の設置、「ビルの谷間のコンサート」や「博多どんたく広場」などのイベントへの対応など、運用面においても社会貢献を積極的に進める活動が実施されている。このような点でより市民に親しみやすく利用しやすい空間となり、公開空地としての価値が高まったといえる。
 次に長期使用に対し、定期的な外壁の点検・補修、2005年の耐震診断実施、2009年の環境配慮の観点に立った営業エリアのLED照明改修、2012年の建物維持のための電気・設備機器に対する経年劣化や故障状況の再点検、またこれと相まってFFG(ふくおかフィナンシャルグループ)本社ビルと福岡銀行本店ビルとの相互連携BCP対応を考慮した築65年までの維持保全計画を作成し、実施している。
 設備の維持・保全としては、メンテナンスの容易性と消費エネルギーの45%低減を目指し、2017年に熱源として空冷ヒートポンプチラーを屋上中空に架台とともに新設、空調方式をセントラル方式からマルチパッケージ AC(個別空調)+外調機に更新、それに伴う受変電の更新を実施している。
 この地区では、国家戦略特区による高さ制限と容積率緩和を活用して、多くのオフィスビルの建て替えが進むと予想されるが、建物所有者のこの建築に対する長期使用と公共貢献への意思は明確である。この建築が持つオリジナリティーを尊重したうえで、時代に即して機能をアップデートしつつ、地道な更新計画を実施していくことにより、いつまでも地域を代表するビルであることが期待されるロングライフな建築と考える。

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