26回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物



ヨックモック青山本店

所在地

東京都港区南青山5-3-3

竣工年

1978年(昭和53年)

改修年

2016年(平成28年)

建物用途

物販店舗、飲食店舗、事務所

建物所有者

潟ックモックホールディングス

設計者

褐サ代計画研究所(新築時)、大成建設梶i改修)

施工者

大成建設

維持管理者

潟ックモックホールディングス
 ヨックモック青山本店は、1978年に現代計画研究所の設計により建設された。その3年前に同じ通りにオープンしたフロム・ファーストビルとともに南青山、みゆき通りの洒落た雰囲気を創り出した代表的な商業建築であり、その当時を知る者にとっては、時代の雰囲気や青春の思い出をともない、当時の姿が思い出されることと思うが、40年近くたった今もその姿とスペースコンセプトは建築主の強い意志により維持されていた。
 今回の改修では、店舗内装は全面的に改修されているが、既存の密度感のあるディテールは保存されている。上階オフィスへのエントランスロビーをアートギャラリーとして一般客に開放し、平面計画を変更してアートギャラリーと喫茶コーナーの回遊導線を新設している。加えて中庭をウッドデッキ化し屋外喫茶コーナーとしてより活用できるようにしていることなど、新たな店舗の環境づくりも積極的に展開している。
 印象的なブルーとホワイトのタイル外装は維持され、特に立体的な形状を持つブルータイルは、劣化が進んだ部分の貼り換えにあたりストックが不足し、同じ形状と色で再制作されており、かのブルーの再現には苦労がうかがわれる。
 中庭を、通りに開いたコの字型に取囲む平面構成で、1階の喫茶コーナーは4つの床レベル差を持たせ、中庭への視線の確保と指向性、一体利用感を確保するというスペース計画は、この建物の重要なコンセプトであるが故に維持されている。それ故に、道路からのアプローチ部分やトイレの設置レベルなど可能な限りバリアフリー化の努力をしているが、局所段差や多目的トイレの不在など現在の基準から見て課題が残る部分もある。
 長期にわたり使い続ける決断は明確である。今般の意匠上の内外装の改修に加えて、天井の落下防止対策、外壁断熱材の付加、アスベストの完全除去、設備の高効率化(省エネ率30%)、屋外機器の低騒音化等、環境並びに安全に対する配慮も十分である。築40年弱、今までも15年、30年の周期で外装・インテリア・設備の改修がなされ、今後も5年ごとに診断、10年ごとに大規模修繕の維持保全・改修計画が作成されており、本社が直接管理にあたることも決められている。
 高度利用が求められる都心地において、用途の一つであった本社機能が移転するなど建替えとういう選択肢もあったが、社業への思いが込められたこの建築を使い続けるという建築主の英断と、それだけのものをこの建物の設計と施工が受け止めていたということが今回の改修につながっている。建設当初のコンセプトが今も活かされ、中庭と一体となった心地よい空間が今後とも保持されることが期待される。

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