26回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物



石橋迎賓館

所在地

福岡県久留米市城南町17-1

竣工年

1933年(昭和8年)

改修年

2014年(昭和26年)

建物用途

迎賓館

建物所有者

渇i坂産業

設計者

松田建築事務所[現 鰹シ田平田設計](新築)、鰹シ田平田設計(改修)

施工者

清水組[現 清水建設梶n(新築)、大成建設梶i改修)

維持管理者

渇i坂産業
 昭和初期に拡がり始めた、和室と洋室が組み合わされた邸宅建築の代表的なものとして、1933年に石橋徳次郎(ブリジストン創業者の正二郎の令兄)邸として竣工した建築である。スパニッシュ・スタイルの外観および、和洋それぞれが見事に調和した華麗な内装デザインは、それを実現した職人技術を含めて極めて秀逸なものである。
 元設計者である松田軍平氏の、新しい時代に向けた建築デザイン開拓への強い意志とこだわり、そしてその技量の高さに大いに感服させられる。
 2013年から始められた改修工事に際しては、正二郎氏の孫となる石橋寛氏(石橋財団理事長)が「オリジナルの姿に戻すと共に、長期に使い続ける」という強い意志を示されたようである。その基本方針を堅持した設計、施工が徹底して追求されたことは特筆すべきことである。
 本建築はそもそも家族への住環境を重視して設計されており、主要な部屋はすべて南向きとし、大きな開口部から冬は日光を取り入れ、夏は南北に風通しを良くするなど、極めて環境に配慮された設計となっていた。
 この設計思想は、開口部の緻密なデザインとして徹底した工夫が施されている。開口部は見付の細いスチールフラットバーで造られ、ガラスはパテで固定という繊細で美しいディテールとしながらも、あらゆる開口部が繊細な開閉金物によって、開き、片引き、両引き、突き出しなどのかたちで開閉可能になっている。また、階段室の高窓などは遠隔操作で開閉させる徹底ぶりである。さらには和室の片引き窓では、片引きしたあと外開き可能となっており、窓の引き残しを感じさせない現代的で大胆なデザインが施されている。改修工事段階で、これらの開口部はほとんどが問題なく可動していたという。建設時の確かな職人技と長年のメンテナンスの徹底ぶりには頭が下がる思いである。
 また、外装と内装の一部の壁は、吹き付けタイルに改変されていたようであるが、これらを丁寧に剥がし、竣工当時の砂や色合いを確認後、オリジナルの風合いになるよう左官工事にて復元するという、非常に丁寧な仕事を徹底している。
 この他、瓦の更新、開口部の塗装の補修、フローリング床の補修、照明器具の復元的更新など、大変きめ細かな作業が「オリジナルの姿に戻す」という基本方針どおり徹底されていることは大いに評価されるところである。
 構造的にはRC造の部分とその後増築された煉瓦造の部分が共存するが、それぞれに適した耐震改修が施されており、空調機更新については、倉庫の一部を利用したり、ラジエーターボックスにビルトインさせるなど、機器を巧みに隠蔽して内装デザインを守っている。
 また、計画的な設備改修ならびに診断が実施され、将来における「長期修繕計画書」が作成されると共に、建築と一体化してこの迎賓館の大きな魅力となっている広大な庭園についても「年間維持保全計画書」が作成されている。現地久留米に置かれた管理担当部署などを含め、所有者の今後の長期にわたる保全と利活用の意欲がしっかりと伝わってくる。
 今後一般社会への開放に、さらに積極的に取り組まれることを期待する。

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