24回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物

神言神学院

所在地

愛知県名古屋市昭和区八雲町70

竣工年

1966年(昭和41年)

改修年

2012年(平成24年)

建物用途

教会、宿舎

建物所有者

宗教法人カトリック神言修道会

設計者

潟戟[モンド設計事務所(新築時)、潟Aルク総合研究所、谷口元

施工者

清水建設梶i新築時)、樺|中工務店

維持管理者

宗教法人カトリック神言修道会

名古屋大学から続く山手通り沿いの緑多き景観の中、南山大学キャンパス内に1966年に建設された。2003年地下鉄名城線の開通に伴い神学院に起こった移転計画に際し、建築専門家の意見や神学院出身の神父たちの原風景への強い思いが契機となり、現状保存による大規模改修の実施を経て、歴史が受け継がれることとになった。
 教会の外壁は、50年の歳月とともに風化が進み、失われた杉板本実型枠の表情や、さらにひび割れ、欠損補修、コールドジョイントや空隙に対し浸透性防水材充填固化などの処理の上に特殊な鏝を用いた薄塗り樹脂モルタルによる全面補修を行った。薄塗り樹脂モルタルを用いたコンクリート打放しの表情づくりは、特殊な鏝を使い職人の短期訓練で施工を行っており、汎用性が高くローコストな左官手法が開発されている。宿舎の外部には、当時から省エネ効果の高いプレキャストコンクリート製ブリーズソレイユが設けられ、機能的デザインが特徴となっていた。しかし自重によるたわみが随所に発生し更新を計画していたが、施工段階での調査に基づく構造的検証により固定部分の再溶接等で全数修復し継続使用が可能となった。内装においても、原状回復の原則と機能の改善という方針に基づく計画が行われ、当時のままの姿や生活を感じ取ることができる。神学院では海外の宣教師も多く在籍し国際性豊かなコミュニティーとなっており、現代の生活ニーズに合わせ宿舎の個室面積を拡大している。また多目的トイレの設置や段差部分へのスロープ設置など、日常生活空間へのバリアフリー化を行い、機能の改善と多様性への対応も行われた。今回の改修に伴い老朽化した各居室のセントラルヒーティング設備は、必要箇所に限定した高効率ヒートポンプエアコンの個別制御方式により再構築している。
 神学院の中心となる教会は、聖壇の上に聳える半円筒を組合せた鐘楼と扇形に配された円筒シェルの連なった屋根で構成された直截な構造意匠主義の表現となっており、現在の耐震基準においても補強を必要としない耐震性能を持つものであった。既存建物の思想が自然を取り入れた設計や自然のままを重んじる神学院であり、ブリーズソレイユや耐久性の高い材料を用いており、当初からサスティナビリティーの高い建築であった。設備に関しては創建当時からのエコロジカルな生活を継続する一助として、時代の変化に伴い発生するニーズへの対応や老朽化した機器の代替えとして現代の高効率・高性能な機器に置き替えただけである。レーモンドは「使い手に愛され、その手によって延命される建築こそ真の美の建築である」と遺した。そのことが50年を経た今、神学院の意思と現代の建築技術により実証された思いである。
 これまで寄付などの浄財に頼り、倹約に重きを置きながら維持を行ってきた。存続に賭けた大規模改修が完了し、今後の維持保全にかかる費用も当初から使用された耐久性の高い材料を継続使用する計画で推進されるものと考えられる。カトリック神言修道会における永続的保全に向けた努力への強い意志も確認された。

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