23回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物

神戸松蔭女子学院大学 六甲キャンパス

所在地

神戸市灘区篠原伯母野山町1丁目2番1号

竣工年

1980年〜1981年(昭和55年〜56年)

建物用途

大学

建物所有者

学校法人 松蔭女子学院

設計者

樺|中工務店

施工者

樺|中工務店

維持管理者

学校法人 松蔭女子学院

松蔭女子学院はキリスト教精神に基づく教育理念のもと、1892年神戸における三番目の女学院として開学した伝統のある学院である。この六甲キャンパスは学院の大学・短期大学の統合校舎として1981年に生まれた。敷地は神戸市の埋立用土砂採取場の跡地であり、高低差20数m、岩盤の露出した緑の全くない荒地で新たな大学キャンパスとしては決して恵まれた土地ではなかった。

計画当時モダニズム全盛の時代にありながら、設計者によって独自に追及されてきたヒューマンな空間表現を「中世のヨーロッパの丘に建つ街のイメージ」として結実されている。六甲山系特有の多くの破砕帯を跨がないように建物を分節して配置し敷地の高低差を利用した結果、適度なヒューマンスケールと高低差によるビューの変化と奥行きが創設され、外部空間と建物が有機的に関連付けられたランドスケープを形成している。建物の外装においても銅版葺き切妻屋根とレンガ色のタイルで統一され、地域の景観をリードする存在となっている。

1995年の阪神淡路大震災では、構造体に対する被害はほとんどなかったものの、当初のデザインを継承するような耐震安全性を確保する改修が行われている。近年はアメニティの向上、バリアフリー化、ユニバーサルな視点でのサイン改修が行われている。

省エネルギーを推進し、空調設備は中央熱源方式から順次個別空調方式のヒートポンプエアコンに更新している。空調機運転は各教室の授業時間(授業開始・終了)に合わせた個別スケジュール制御を行い省エネルギーを図っている。トイレ改修時に節水型衛生器具に更新し、照明は人感センサー点滅制御に更新している。照明器具は改修時に高効率照明器具のHf蛍光灯・LED器具に更新している。設備配管・配線の保守・更新を容易にできるよう設備共同溝が設けられ各棟を接続し、インフラの設備配管・配線の腐食防止を図っている。環境負荷低減と省エネルギー化を推進し設備機器の更新と温度設定監理や学部学科ごとのモニタリングによる空調運転方法の改善により一次エネルギー消費量は年々減少傾向で、2012年度実績では文部科学省が公表した学校施設エネルギー消費実態の6割程度となり、平均を大きく下回る成果を挙げている。

メインストリート「ケヤキ坂」に代表される緑豊かなランドスケープとシーケンスを意識した空間構成はキャンパスとしてのアイデンティティを高め、記憶に残る情景を創り出している。今後も歴史を継承し地域に貢献する建築として高く評価できる。

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