ビルのリスクを評価する

「エンジニアリング・レポート(ER)」

 

 

 

◆不動産投資・取引等において不可欠なER

 

 

 

(1)ERの必要性

不動産投資・取引等において、買い手の立場、売り手の立場、融資の立場等から、取引対象の不動産を適正評価するために、デュー・ディリジェンス(DDDue Diligence)と呼ばれる調査が行われます。DDは、@弁護士等の専門家が行う法的調査、A会計士や不動産鑑定士の行う経済的調査、B建築士や技術士等のエンジニアが行う物理的調査の3つに区分され、そのうちBの建物に内在する物理的なリスクを評価した物理的調査報告書をエンジニアリング・レポート(EREngineering Report)といいます。

投資等不動産の価格を構成する第一の要因は収益性ですが、不動産の収益性は、立地条件ばかりでなく、対象不動産の物理的性能によるところも大きく、法的調査、経済的調査とあわせて行われるERは重要な意味を持ちます。

 

(2)ERの目的

ERは、技術的見地から、第三者の立場で、対象不動産を評価し、収益性に影響を及ぼす様々なリスクを明らかにし、出来うるものはリスクを定量化するという役割を持っています。対象不動産の収益性に影響を与える以下の様な要因を調査し、問題を指摘し、出来得るものはリスクを定量化し、説明することが、ERの目的となります。

@物理的な品質や性能の低下に伴う費用の発生

A地震等の自然災害による損失の発生

B環境リスクの除去に伴う費用の発生

C遵法性(建築基準関係規定)の是正に伴う費用の発生 等

 

(3)ERの活用状況と今後

ER20019月にJ-REIT(不動産投資信託)として2つ投資法人が上場したのを契機として、不動産証券化の進展とともに急速にニーズが拡大しました。また、2007年には、不動産鑑定評価基準の改正が行われ、証券化市場における鑑定評価の公正性と客観性の確保のため、証券化対象の不動産の鑑定評価に際して不動産鑑定士は委託者にERの提出を求め、その内容を分析・判断した上で鑑定評価を行うこととされました。このような背景から、現在、不動産証券化市場や証券化対象不動産の鑑定評価においてERの取得は定着しています。

しかし、ERを取得することで以下の@〜Cに挙げる様な対象不動産の価格形成要因を把握できるため、それ以外にも不動産購入の判断材料、融資の際の金融機関への説明、投資家の投資判断、所有不動産の適正価格の判断等に活用が期待できます。

 

@不動産の収益の健全性や支出項目の妥当性

A今後の設備投資・施設計画等の妥当性

B罹災等により途絶する収入や、復旧コストの算定

C将来売却する際に障害となる要因の分析 等

 

今後は、不動産証券化や鑑定評価以外にも、不動産売買やM&Aの際等の自己資産評価、不動産取引の適正化や透明化にERを活用していくことが強く求められます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆「不動産投資・取引におけるエンジニアリング・レポート作成に係るガイドライン」の刊行

 

 

 

日本では1990年代後半より不動産の流動化が行われるようになり、ERが取得され始めましたが、当時のERは各社が手探りで作成している状況にあり、ER作成者毎にERの考え方にばらつきがありました。

その後、不動産流動化の急激な進展と多様化により、投資家保護の観点から各関係者には説明責任と情報開示が強く求められるようになったため、BELCAではERの適正な作成と公正な不動産取引の実現のために、2001年にER作成の考え方を示した「不動産投資・取引における エンジニアリング・レポート作成に係るガイドライン(ERガイドライン)」を刊行しました。

このERガイドラインは、ER作成に関わる技術者の指針とされており、より信頼性の高いERが作成されることを目指して、内容を充実させながら改訂を行っています(改訂年次:2007年、2011年、2019年)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第 1章:

総則

 

 

 

 

第 2章:

ER総論

 

 

 

 

第 3章:

建物状況調査

 

 

 

 

第 4章:

遵法性調査

 

 

 

 

第 5章:

修繕更新費用

 

 

 

 

第 6章:

再調達価格の算定

 

 

 

 

第 7章:

建物環境リスク評価

 

 

 

 

第 8章:

土壌汚染リスク評価

 

 

 

 

第 9章:

地震リスク評価

 

 

 

 

10章:

レポーティング

 

 

 

 

ERの構成については、こちら

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◆問合せ先

 

 

 

公益社団法人 ロングライフビル推進協会(BELCA) 総合企画部

TEL03-5408-9830  FAX03-5408-9840  E-Mail: belca@belca.or.jp