19回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

ホテルニューオータニ本館

所在地 東京都千代田区紀尾井町4番1号
竣工 1964年(昭和39年)
改修年 2007年(平成19年)
建物用途 ホテル(改修前後とも)
建物所有者 株式会社ニューオータニ
改修設計者 株式会社日建設計
エヌアールイーハピネス株式会社
株式会社スタジオM
株式会社日建スペースデザイン
改修施工者 大成建設株式会社
株式会社関電工
沖ウインテック株式会社
ダイダン株式会社
株式会社城口研究所
防災エンジニアリング株式会社
 この建築は、1964年(昭和39年)東京オリンピックの開催に向け、内外の賓客を迎える宿泊施設として建設された。敷地の南西面を弁慶堀に囲まれたこのホテルは、警備のし易いことから数多くの国賓が宿泊することでも知られている。建築後40年余りを経過し、耐震強度の向上と老朽化した施設の内外装、設備の一新を目的にこのプロジェクトはスタートした。建て替えとはせずにリニューアル再生したことは、資源の有効活用、地球環境負荷の低減への貢献にも繋がっている。
 リニューアル工事は、この建物形状の特徴にもなっている三ツ矢型の形状を活かして3期に分けて行い、工事中も営業可能部分を確保する工夫を行っている。外装の改修は、既存のアルミカーテンウォールを全て撤去し、ガラスカーテンウォールとした。既存外装のゴールド調の印象をスパンドレル部の木調色に継承しながら「和」のイメージを演出するなど外観の印象を一新することに成功している。一方でこのホテルの特徴として知られている最上階の回転レストランは、サッシュの取り換えと安全性の向上を図り、旧来の姿をそのままに客席が回転する360度のビューレストランとして改修された。外装を修復しながら長寿命建築を守っていく考えも大切だが、ホテルなどの商業的な施設にあっては、時代に合わせた施設として商品価値向上を図るこのような改修もリフォームの好事例と言える。
 耐震性の向上については、耐震改修促進法の適用を受け、超高層建築として第1号の認定を取得している。近年、長周期地震動による超高層建築物の耐震性能に対する信頼性向上が課題となってきている中で、コア部と各ウィング端部に制振ブレースを設置し耐震性能の向上を図っている。この改修により現行基準法に基づき設計される超高層建物と同等の性能を確保し、更なる長寿命建築として安心して使い続けられる建物に生まれ変わった。
 内装については、一部フロアーをエグゼクティブハウス「禅」として全面的な改修を行い、ホテルのイメージアップを図っている。また、各客室も外装改修によるフルハイトのガラスカーテンウォールの明るく開放感ある部屋に生まれ変り、客室の商品性が飛躍的に向上している。バリアフリー化にも前向きに取り組み、既存躯体の段差解消によるフラット化や新たにバリアフリー対応の専用客室を企画するなど時代の要請に応える姿勢も評価された。
 設備のリニューアルも省エネルギーを目的に取り組んでいる。客室用空調機として水熱源ヒートポンプ併設のFCU(ファンコイルユニット)を設置している。これは、本プロジェクトのために開発されたAEMS(エイムス)システムと称し、2管式のFCUながら利用者の好みで客室ごとに冷房・暖房運転が行えるハイブリッド型FCUである。快適性の向上と省エネルギー化が図られ、省エネ率は冷暖房エネルギー、搬送動力共に約40%となっている。また、屋上緑化による冷暖房エネルギーの削減や、最上階レストラン厨房の全電気方式への転換により大幅なCO2削減に寄与していることも評価された。
 
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