GOOD CYCLE BUILDING 001 淺沼組名古屋支店

第33回BELCA賞 ベストリフォーム部門

西側ベランダ
エントランス
エレベーターホール
ラウンジ
応接室
執務室
8階イベントホール

建築物概要 ―Outline of Architecture―

選考評 ―Selection Commentary―

 本計画は、築30年を経過した株式会社浅沼組・名古屋支店の改修であり、「都市における「循環」のなかの建築」をテーマに「環境配慮型リニューアル」と銘打って実施されている。既存躯体は独自開発された「通気ハイブリッド法」によって診断され、今後の定期的な外壁メンテナンスをすることで、少なくとも70年の供用が可能と判断された。健全なスケルトンあっての、長期使用に向けたリニューアルである。
 
 自社ビルならではの徹底したリサイクルや社員ワークショップ・デザインパートナーとの協働など、そのプロセスにおいても意欲的な取り組みとなっている。

 何と言っても特徴的なのは正面西側ファサードの改修である。改修前はガラスファサードであったが、樹齢130年の吉野杉の丸太と深いバルコニーの緑があいまって、有機的で「循環=GOOD CYCLE」を感じさせる表情となっている。吉野杉は、将来的に家具など別の用途としても使用可能とする理念のもと、あえて未乾燥のままとりつけられている。

 建設残土をアップサイクルした土壁、還土ブロックを使った間仕切り、杉の端材を利用したテラゾーテーブルなど、徹底したリユースも行っている。結果、温かみを感じる内装・表情のある家具が内部空間を彩っている。

 SDGs時代の新たなリニューアル:「使う人の健康に地球に負荷をかけないサステナブル建築」として、昼光センサー・高COP空調機・デシカント空調などを採用し、省エネルギー化に努めている。結果、運用時のCO2排出量は52%削減を実現している。執務空間はバルコニーによる日射遮蔽効果ならびにロールブラインドによる制御により温熱環境・視環境を向上させている。また水やりの用意な屋内プランターなど、屋内外に緑を配し、快適な執務環境を創出し、快適性(WELL認証ゴールド取得)と省エネ(ZEB認証)を両立させていることは高く評価された。

 現地審査の際も、オープンテラスとしてのバルコニーの心地よさ、自然素材の活用の試行や改修時に現れた壁面の表情をデザインとして再生した試み、最上階の天空光の注ぐホールなど、環境面でもデザイン面でも快適な空間を体感することができた。執務室とコアの境界をガラスパーティションにすることで、より広がりを感じるオフィスとなった一方、レイアウトはやや従来型と感じられた。今後、緑豊かなバルコニーや、明るいラウンジなども執務・滞在空間として積極的に活用されるポテンシャルは十分感じられた。ユーザーが主体的に関わり、楽しく「育てていける」建築というプロジェクトの理念をぜひ実現していただきたい。

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