第31回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

横浜スタジアム コミュニティ・ボールパーク

所  在  地

神奈川県横浜市中区横浜公園

竣     工

1978年

改  修  年

2020年

建 物 用 途

観覧所

建物所有者

横浜市(所有者)、渇。浜スタジアム(建築主・施設管理者)

改修設計者

清水建設

改修施工者

清水建設梶A馬淵建設梶A大洋建設

横浜DeNAベイスターズでは、観客動員数が過去8年間で2倍に増大しており、本拠地横浜スタジアムの観客席の増席が望まれていたという。これに加え同スタジアムが東京オリンピック2020においての野球・ソフトボールの競技主会場に選出されたため、合わせて国際大会の会場としてのクオリティ向上を目指して大改修が企画された。

日本でも近年建設された(或いは現在建設中の)スタジアムでは、ただ単に野球を見るだけのための球場ではなく、アメリカのメジャーリーグスタジアムのような個室などを備えた多様な観戦スタイルの提供と、それ以外にもここに来ることで様々なエンターテインメントを体験できる“ボールパーク”とする傾向が高まっている。DeNAも『横浜スポーツタウン構想』を掲げ、横浜スタジアムをボールパークとして再整備することで球場を核に地域、経済を盛り上げていく意図が見られる。個室やバルコニー席、屋上バーベキューテラス席などの多種多様な観客席や回遊デッキ下の大型店舗など新しい球場のスタイルを改修、増築により実現している。残念ながらコロナ禍のためにプロ野球は観客制限、オリンピックは無観客開催となり、まだその効果の実態は確認できていないようであるが、駅前立地や都市公園内での施設というようにそのポテンシャルは高く、フル稼働された時の効果が楽しみである。球場回りには公園内の緑地と球場を有機的につなぐ前述の回遊デッキを設置している。このデッキは市民の散策、ランニングや通勤、通学、買い物の通過動線として日常的に利用されており、通常時にはスタジアム内を見ることができる「ドリーム・ゲート」部分も設けるなど、外部空間との一体化、周辺環境の向上に寄与している。惜しむらくは施設の大きさに対し敷地が狭く、球場が道路に接している側にゆとりある動線とスペースが確保できていなかった点だろうか。

具体的な建築計画においては、スタジアムを増席するに当たって既存の駆体とは構造・避難ともに独立させながらシームレスに一体化させた。一方、増席部分では JR 関内駅からスタジアムへのエントランスとなるアイコニックな空間を創出している。施工も野球興行を行いながらの工事となる期間を2シーズン経由しており、3万人もの観客の安全、動線確保には想像を超える綿密な検討と計画、準備に時間を費やしたことであろう。

現在の日本では、野球場をはじめとする多くの競技場で建設後年数を経たものが多くなってきている。そんななかで当プロジェクトは、スクラップ&ビルドではなく改修、増築によってその価値を高めていくプロトタイプとなることは間違いない。

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