第31回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

真庭市立中央図書館

所  在  地

岡山県真庭市勝山53-1

竣     工

1980年

改  修  年

2018年

改修前用途

庁舎
改修後用途  図書館 

建物所有者

真庭市

改修設計者

真庭市、青木茂建築工房、金箱構造設計事務所、森村設計

改修施工者

且O木工務店、三和建設

 真庭市立中央図書館は、1980年に庁舎として建設され、築41年が経過した地上3階の鉄筋コンクリート造の建物をリニューアルした建物である。市町村合併により、庁舎としての役目を終え、2015年に市内に分散した図書館及び分館をつなぐために、余っている旧庁舎の建物を中央図書館に再生することが決定した。その後、設計プロポーザルが公告され設計が開始され、長期にわたって利用されることを前提に外観を維持更新しながら、耐震補強を施し、2018年に図書館としてリニューアルオープンした。

図書館への改修工事に際して、長期使用を実現するために築40年近くが経過した建物のコンクリート躯体を総点検し、適切に躯体補修と耐震補強を施し、コンクリート躯体の健全性と建物の耐震性能を担保している。全箇所の躯体補修記録を作成し、補修が適切になされたことも確認している。今後50年の長期使用のために、部分的な不具合の解消ではなく、建物全体を長期使用に耐えうるものに改修し、耐震性、環境負荷軽
減、メンテナンス性、美観などの社会的存在として備えるべき機能を備えた建物に改修している。


地域の資産であるRC3階建ての旧耐震建物を耐震補強し、堅牢で長寿命なスケルトンとし、市産材のCLT や木ルーバーを使用した柔らかな木質インフィルで材につつまれた図書空間を実現した。既存スラブに穴を穿ち、薄暗い室内空間に光や上階との繋がりを持たせている。穿たれた穴によって、均一な既存空間に明るさや広がりのムラを持たせ、多様な場を実現している。

本図書館は伝統的な木造建築の立ち並ぶ勝山町並み保存地区に面している。外観は、CLTを使用した庇や木ルーバーにより木のあたたかみを感じることの出来る計画とし、周囲の景観との連続性を表現した。新設のカーテンウォールの裏側に見えるオレンジ色の既存タイルは、そのまま残し、ガラスに反射する山並みと共にこの場所の風景の一部として扱っている。

真庭市は、平成26年に「真庭バイオマス産業杜市構想」を策定し、バイオマスエネルギーの利用を強力に推進しており、市内において木質バイオボイラの燃料となるペレットの製造、加工、販売、運搬の一連のインフラも構築している。こうした背景から、本建物においても空調設備に木質ペレット炊吸収冷温水器を採用し、31.7tのCO2 削減を実現するとともに、安定した自然エネルギーの持続的な供給を可能としており、建築単体のみではなく、建築を含んだ地域での地球環境保護の取り組みが実践されている。

地方都市において、既存ストックの有効活用は喫緊の課題であり、余剰となった公共建築物を活用可能な資産と見立て、市民サービスや利便性を向上させる施設として活用することが、明確な意思を持って実現されている。これからの公共建築のあり方を示した長寿命化建築の一例として評価できる。

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