第30回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム

所在地

神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53

竣工

1951年

改修年

2019年

建物用途

美術館・博物館

建物所有者

宗教法人 鶴岡八幡宮

改修設計者

樺O青研究所、轄竭q建築研究所

改修施工者

樺|中工務店
 1951年、神奈川県立近代美術館竣工、坂倉準三建築研究所設計。
 2019年、大規模改修完了、鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとなる。
 所有者鶴岡八幡宮の明確なビジョンとして「新たな交流と文化をはぐくみ、発信する」「鶴岡八幡宮、鎌倉についての理解を深める活動を行う」「参拝を深める空間を創出する」の3つを基本理念として改修は行われた。

 今回の改修においては新築時のデザインを継承する考え方のもと、構造・屋根・外装・内装・設備、すべての性能を、現代の技術を採用し今後長期間使用できる建築に改修をしている。
 今回の改修では以下が方針とされており確実に実行されている。
 @坂倉準三が創造した空間の保存、再生
 A新規材料はオリジナルの材料の選定思想の継承、機能向上した同質材料の採用 
 B現代的な工法による劣化対策 
 C耐久性、メンテナンス性、維持管理コストの配慮 
 D記録の保存
 また、新館が建設された、坂倉準三による手直し色直しが落ち着いた1966年の時点の姿に戻すことが基本方針として定められている。

 構造設計の耐震補強においては、1階柱脚部の補強、1階中庭床の構造スラブ化、2階床梁の補強、2階R階水平ブレース補強、壁内フレームに鋼板格子耐震壁補強(1階9か所・2階7か所)が行われている。仕上げ材の中に補強部材は納められ、構造耐震指標(Is値)約0.7が確保されている。
 新築時のピロテイー、小径の柱、キャンチレバーの形状をそのままに建築の連続的につながりゆく空間が守られて耐震性能が向上されている。
 外装改修においては、繊維強化セメント板(厚12)を支持するアルミ製押し縁の断面を新しく設計し、裏側のゴムパッキンを用いて防水性能を向上させている。同時に断熱材フェノールフォーム厚30等の複合断熱層を形成し断熱性能を36%向上している。
 屋根の改修においては、新築時から谷部分の水勾配を変更し、水下部の笠木・樋の納まりを改善し止水性能の向上がされた。また複合断熱層を形成し断熱性能を47%向上した。
 屋根の改修により笠木天端が原設計の高さになり、金属幕板が原設計の幅になることで立面のプロポーションが竣工時のバランスになった。

 利用者への配慮において、エレベーター及び多目的トイレが設置されバリアフリー化が行われた。また中庭は新築時の玉砂利敷仕上げの継承と、バリアフリー化に対応し玉砂利洗い出し仕上げとされている。
 鶴岡八幡宮の参道に訪れた人々が入りやすくなるように東側にアプローチとメインエントランスが形成された。そして訪れた人々は、快適なカフェで憩いの時間を過ごし、西側から2階への階段とその奥にある中庭への空間を見通し、平家池沿いの遊歩道を巡りながら、鶴岡八幡宮の自然と鎌倉文華館鶴岡ミュージアムの建築が調和する景観を体験してゆく。

 美術館の展示室諸室では比較的厳密な温湿度管理が求められるが、この文華館の空調においては、日中は熱源機器を運転するが、夜間は熱源機器を運転しない方法として除加湿ユニットを採用している。建物規模、運用上の観点及び展示品の性格なども考慮して、過度に複雑な設備や制御・監視を導入することなく、適切な内容の設備計画、維持管理がなされており評価できる。また展示ケース内の温湿度についても、学芸員が小型の温度計などを用い確認を続けるなど慎重な対応もなされており、関係者全員で維持管理に取り組まれている。
 

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