| 第30回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 | |
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 アンレーベ横浜星川 | |
| 所在地 | 神奈川県横浜市保土ヶ谷区桜ヶ丘1-18-28 | 
| 竣工 | 1954年 | 
| 改修年 | 2019年 | 
| 建物用途 | 賃貸共同住宅 | 
| 建物所有者 | 神奈川県住宅供給公社 | 
| 改修設計者 | 馬淵建設 | 
| 改修施工者 | 馬淵建設梶A樺r田電気工事、潟Aクアテック | 
| アンレーベ横浜星川は、昭和29年(1954)に竣工した「桜ヶ丘共同住宅」をリノベーションした賃貸住宅である。築60年以上が経過し老朽化が進んだ建物を、今後も優良な賃貸住宅として継続させるために、神奈川県住宅供給公社により「住宅性能改善事業」として「今後も建て替えによる投資利回りが期待できない団地における既存ストックの活用として建物長寿命化や商品価値の向上を図る」「従来の改修工事を更に一歩進めた設備改修やリノベーション等を実施して市場競争力や居住性能の向上を目指す次世代への取り組み」を目的に掲げ実施されている。 最大のポイントは今まで無断熱であった建物に厚み50mmの断熱材を躯体の外側に張る外断熱改修である。これにより断熱性能、施工性の向上となるのはもちろんのこと躯体の中性化進行の抑制にもつながっている。また、外断熱改修に加え、Low-Eガラスを採用し温熱環境の向上を図り、居住者の光熱費の軽減を計るとともに、古い建物に特有の結露やカビの抑制にもつなげている。更には公社資産の利活用を通して、SDGsにも貢献している。排水竪管を屋外化し、住戸内北側に水回り等設備を集約することで、室内プランニングの自由度や、室内の回遊性を増すことができている。水廻りを充実させることで清潔感や居住性が高まり、更には将来のメンテナンス性の向上にもつなげている。屋外化した排水竪管はルーバーで隠す等して外装イメージの統一感を保ち意匠性への配慮もなされており、いわゆる今までの“団地”のイメージが“マンション”として見事に生まれ変わっている。 そして何よりも今回の改修工事が内外装全ての工事を「居ながら」で実現させたことに驚かされる。家賃収入をアップするため全ての住戸をフルリノベーションする改修ではなく、高齢化が進む居住者もできるだけ住み続けられるよう改修モデルを「必須リノベ・部分リノベ・フルリノベ」の3タイプから選択できるようにし、数字スライドパズルを解くように居住者の「居ながら改修」に取組み、転居の負担を軽減し、短工期で実現させている。所有者・設計者・施工者・居住者のコミュニケーションと理解・協力のたまものである。 「アンレーベ」というネーミングはフランス語の「reve(夢)」からつけられたというが、まさに“夢の改修”が実現されている。限られた予算内で必要なものと諦めるものを的確に判断し改修に努めたと思われ、関係者の企画力、計画力、実行力の高さが表れている。 今回のリノベーションは公社が所有する約14,000戸の賃貸住宅の中で1棟丸ごと行うモデルケースとして実施されたというが、これに続く新たな次なるチャレンジが大いに期待される。 | |