第29回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

美馬市地域交流センター ミライズ

所在地

徳島県美馬市脇町大字猪尻字西分116-1

竣工

1987年

改修年

2018年

建物用途

[改修前] ショッピングセンター・駐車場
[改修後] 劇場・図書館・地域交流スペース・市民サービスセンター・子育て支援センター・保育所・屋上広場・交番・スーパーマーケット・駐車場

建物所有者

美馬市

改修設計者

潟Aール・アイ・エー、叶V日本設備計画

改修施工者

五洋建設梶A且l電工
 美馬市は徳島県の北部の中央に位置する。「うだつが上がらない」とは、いつまでも出世しない、暮らしが良くならないという意味だが、美馬市脇町地区には、ずらっと「うだつが上がった」町並みがあり、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。本建築は1987年に大型民間商業施設として開業し、その外観は隣接する「うだつの町並み」に調和するよう白壁と瓦屋根により構成され、その特徴的な外観はまちのシンボルとして地域の人々に愛されていた。30を超えるテナントが集まり、年間200万人が訪れる商業施設として賑わったこの施設も、2010年代になると次第にテナントが退去し、建物の半分以上が空き家状態となっていた。本件は、この施設を市が建物と土地を取得し、図書館などの市民サービス機能の拡張と地域交流スペースの充実化といった施設整備計画を行うだけでなく、既存の1テナント(スーパーマーケット)は改装して営業を続けるという、官民が一体となったプロジェクトである。
 本件の中でも特筆すべきは、ショッピングモールの吹抜空間を利用して501席の本格的な音楽ホールにするというコンバージョンであり、その気積を取るために、1階のセントラルコートの床を減築し、屋根のトップライトを撤去、そして地下駐車場の一部をホール空間に転用している。十分な客席の気積を確保することで、新築のホールにも劣らない残響空間となって音の響きが得られ、隣接するエリアに対する遮音計画においては、ホールの壁を二重にすることで遮音性能をキープしている。また、ホールを取り囲む外側の壁には地元の杉材が使われている。
 内装材を撤去した後の空間は、8mスパンでRC柱が建ち並ぶ商業空間なのだが、この柱の存在を消すために、市民が活動する部室である「ハコ」と、うだつの壁を模して様々な機能を与えた白い「カベ」を2つの構成要素として、各用途に合わせて組み立てている。実際にコンバージョンを行った地域交流センター側では、独立した既存柱が一本も現れない空間となっている。
 構造的な耐震補強は、地下駐車場の目立ちにくい部分でのRC耐震壁補強や、スリット改修、SRF工法による柱繊維巻補強で意匠上も配慮している。用途変更に伴う床荷重への対応としては、屋上の駐車場を屋上広場にすることで積載荷重条件を軽減し、図書館の本棚は4段の低層とすることで、元の店舗の積載荷重のまま対応できている。
 設備的には、防災を考慮して発電機を250KVAから625KVAに更新し、省エネルギー対策として照明器具の総LED化、全熱交換器組込み外気処理空調機の採用など用途ごとに細かく区分けし、中央監視にて制御を行うことで消費電力の削減を行っている。
 以上のような取り組みを行い、図書館の年間利用者数が以前の4倍になったことからも、市民に愛される施設として見事にコンバージョンできた案件であると言える。

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