第29回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

日本万国博覧会記念公園太陽の塔

所在地

大阪府吹田市千里万博公園1-1

竣工

1970年

改修年

2018年

建物用途

[改修前] 博覧会・展覧会施設
[改修後] 展示場

建物所有者

大阪府

改修設計者

大阪府住宅まちづくり部公共建築室一般建築課、鰹コ和設計

改修施工者

椛蝸ム組、鰍ォんでん、且O晃空調、フジテック
 1970年、大阪万国博覧会。太陽の塔は「人類の進歩と調和」というメインテーマのもと、トラス構造の大屋根を突き抜けた高さ70mのモニュメントとして創られた。そして2020年、太陽の塔は万博記念公園の芝生広場に今も立っている。縄文のエネルギーをデザインした太陽の塔は、建築を超越した情念的モニュメントであった。岡本太郎氏は「べらぼうなものを」を作ると意気込んだという。1975年、博覧会後に取り壊し予定であった太陽の塔は、多くの人の取り壊し反対の意見を入れて永久保存されることになった。単なるノスタルジーではない何かが人びとの心を動かしたのであろう。建築的ではない情念的なものが残されたのである。
 そして2018年、現代の技術基準をクリアしてリフォームが行われ「2階建ての建築物」となった。法律的な形式はどうであれ、縄文のエネルギーが太陽の塔を蘇らせたとも言えるのではないか。内部の展示も基本的には以前のままである。50年前の生命の樹は、今またその樹液を循環させ出した。リフォームという言葉を使って良いのか正直悩むところであった。50年前よりもさらにテクノロジーが進化した今こそ、縄文のエネルギーが望まれているのかも知れない。思想的価値のあるリフォームとしてその意義は深い。
 技術的・手続的な点もユニークである。万博閉幕後48年間、内部は閉鎖され工作物とし保存されていたが、一般公開を前提として建築物に変更された。今回のリフォームでは、岡本太郎氏の思想的なデザインイメージを変えずに、耐震性の確保とメンテナンス及び将来的な演出変更を目的として、各設備の設置・エントランス空間の増築・バリアフリーへの対応について、充分配慮されている。所有者・設計者・施工者は多くの困難を乗り越え「2階建ての建築物」として蘇らせた。非適合部分をすべて現行法規に適合させるため、腕より下のRC壁増打や腕より上の鉄骨補強、腕の上下振動対策としての軽量化、将来の展示変更やメンテナンスのためのキャットウォーク設置、新設する設備機器を来館者に見せない工夫など、緻密な設計上の配慮がなされている。万博当時の「塔内演出スコア」をもとにして、生命の樹とその内部色彩も忠実に復元されている。展示設計者と改修設計者の連携は言うまでもなく、展示工事と建築工事の仮設活用などにも綿密でレベルの高い連携が見受けられる。ボトルシップを制作するような困難を極めた工事だが、BIMや構造解析ツールなど現在の技術を駆使して効率性と正確性を高めている。外部造形デザインはそのままに、内部における建築物としての適合化への執念とそれを裏付ける技術的レベルの高さは、まさにベストリフォームに値する。

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