第28回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

MOA美術館

所在地

静岡県熱海市桃山町26-2

竣工

1981年

改修年

2017年

建物用途

美術館

建物所有者

宗教法人 世界救世教

改修設計者

樺|中工務店、叶V素材研究所

改修施工者

樺|中工務店、滑ヨ電工、高砂熱学工業梶Aダイダン
 MOA美術館は、教祖生誕百年事業として、世界救世教のある熱海市伊豆山の中腹に自然と人工の美が一つに溶け合う理想的芸術郷を作るべく、1981年(昭和56年)に竣工した。2003年(平成15年)にはBELCA賞のロングライフ部門を受賞している。
 今回は「古美術をより美しく見せる空間」に焦点を絞り、@古美術をより美しく見せる A公開承認施設としての機能向上 B人々に愛され続ける美術館 の3点をコンセプトとしてリフォームを行っている。
 以下に上記のコンセプトに沿った主な改修ポイントを記載する。

@従来の大広間の展示空間では展示ケース同士の映り込みという問題点があったため、新たに黒漆喰壁を設けた回廊式へ変更し、展示ガラスを高透過低反射合わせガラスへ変更することで美術品をより美しく見せる工夫を施している。また、框材に屋久杉や行者杉、展示床に和紙畳を採用するなど日本の伝統的な素材を使用することにより、古美術が最良の状態でより美しく身近となるよう工夫されている。
A展示ケース内の最適な温湿度環境を目指し、展示ケースと外壁の間に中空層を設けて空気循環させると同時に、密閉式展示ケースとして外気変動の低減を実施、また展示ケース内美術品の耐震を考慮した展示ケースの常設免震化を実施、内装材に含まれる化学物質による展示品への影響低減化のための検証など数々のシミュレーションを行い、公開承認施設としての条件を十二分に満足し、より高いレベルでの維持管理を継続できる展示ブースとしている。
B全面的なバリアフリー対応策としてすべての出入り口の自動扉化、展示室内のエレベーター設置、エントランスホールのスロープの新設等による車いす団体客の受け入れ、美術館らしい国際化対応サインの統一による外国人へのアピール、貴重な内外装のインド砂岩や国内の大理石の研磨・洗浄と一部撤去する仕上げ素材の活かし取りによる他部署への再利用など、新築時の景観と改修デザインとの調和を図ることで、愛され続ける美術館となるよう細部に至るまで検討されている。

 リフォーム中の休館期間については、設計段階から内装材料の放散ガス調査を行い、展示ケースのモックアップを作成することにより展示ケースの設計・製作期間を大幅に短縮し、11か月(施工7か月+枯らし期間4か月)と最短化している。
 フレンチレストランやカフェの改修による食の充実、ミュージアムショップにおける限定品の取り揃え、テラスからの海の眺めの素晴らしさなど、「美術館自体が次代に引き継ぐべき大切な一つの”美術品”」として、来場者や地域住民に愛され続けるよう、更なる運用の向上を継続して行っており、本美術館は熱海という観光地を更に活性化していく重要な施設となろう。

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