第27回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

土浦市庁舎

所在地

茨城県土浦市大和町9-1

竣工

1997年(平成9年)

改修年

2015年(平成27年)

建物用途

[改修前] 大型物販店
[改修後] 市役所

建物所有者

土浦市

改修設計者

葛v米設計

改修施工者

褐F谷組、且R本工務店
 土浦市所有の駅前再開発ビルでありながら、大型物販店舗が撤退した後を市役所へとコンバージョンするという、大変今日的な課題に挑戦したユニークなプロジェクトである。土浦市の表玄関であるJR土浦駅西口に市役所機能を集約移転し、駅と一体となったバスターミナルやペデストリアンデッキ、市立中央図書館をコアとする公共施設整備を行なうことによって、郊外駅前中心市街地の活性化、コンパクトシティの実現を目指すものである。
 様々な比較検討を経た中で、コストおよび工期上の大きなメリットがコンバージョン採用の決め手となったようである。
 大型物販店舗の特徴である、視野を妨げない大きなワンフロア平面と天井の高さを活かし、市民が一望可能なわかりやすい窓口カウンター計画を実現している点は秀逸である。
 市民との接点が多い1、2階の市民窓口カウンターは緩やかにカーブを描き、一本のカウンターとしてその長さを最大限に確保した上で、見やすいサイン計画と整合させている。また、コンシェルジュ機能を持たせた総合受付を配置し、関係カウンターまでの誘導案内をおこなうなど、ワンストップ的市民サービスへの志向を強く感じさせる。
 駅前の市役所正面から奥に向けては、同じ再開発ビルの駐車駐輪場、住宅棟が続き、その奥は既成市街地へと広がる。土浦駅とリンクするペデストリアンデッキのレベルは、市役所の2階を中心に公共施設群をバリアフリーで繋ぐ。
 さらには土日や閉庁時間帯でも市役所を経由して、再開発住宅棟および既成市街地へと通り抜けを可能にしていることは、これからの市役所の在り方として大きな方向性を指し示すものであろう。
 閉庁時のセキュリティ対策から市役所との間にはガラススクリーンを設置した上で、通り抜け可能なゾーンを「市民ラウンジ」と称して市民に開放しており、学校帰りの学生や買い物帰りの人々に利用されている。地下1階には生鮮食品を扱う商業店舗を入居させるなど、商業施設と市役所との融合にチャレンジしているものの、やや市民ラウンジが冗長なためか、楽しさや賑わいがやや欠ける印象がある点、今後の改善リニューアルに期待したい。
 防災拠点整備としては、耐震性能の強化はもちろん、電気・水道などのバックアップを確保するなどの機能強化に加えて、マンホールトイレや外部電源取出しなどの機能を有する防災広場として大屋根付きのイベント広場を整備するなど、大幅な充実をはかっている。
 また、各種バリアフリー対応に加えて、照明のLED化、タスク&アンビエントの採用など省エネルギーにも積極的に取り組んでいるが、バックヤードや共用部における点灯区分など、運用面での一工夫が欲しいところである。

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