第26回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)

所在地

兵庫県神戸市中央区小野浜町1

竣工

[旧館]1927年(昭和2年)  [新館]1932年(昭和7年)

改修年

2012年(平成24年)

建物用途

[改修前] 研究所、事務所
[改修後] 美術館・博物館、集会場、事務所、物販店舗・飲食店舗

建物所有者

神戸市

改修設計者

轄イ藤総合計画

改修施工者

椛蝟リ工務店
 神戸の新港地区は、旧外国人居留地の南側に位置し、港のシンボルである神戸税関本関庁舎や新港貿易会館、その周辺の倉庫群など、生糸製品の輸出を行なう重要な拠点であった大正末期から昭和初期の「近代日本の時代の姿を留めた建物」が多く残っており、神戸ウォーターフロントの中でも古い港町の雰囲気を感じることができる大切なエリアである。
 デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)は、その歴史的建造物の一つである「神戸生糸検査所(昭和2年竣工の旧館と7年竣工の新館の2つの建物からなる)」を保存活用し、リノベーションにより甦生された創造的活動のための場である。改修前の用途である「研究所、事務所」から「ホール、ギャラリー、クリエイティブラボ(オフィスやアトリエ)、会議室及びショップ、カフェ」へ用途変更されており、内装改修の他、耐震補強、設備機器の全面改修を行っている。ネオゴシック風の外観は概ね当時の形を継承し、外壁のスクラッチタイルは、打診検査によって薬液注入による剥落防止措置や、完全に浮きが生じている部分は既存と同等の新設タイルへの張替えを行っている。耐震補強については、既存躯体の健全化と、桁行・梁間共に壁量を増やしているが外観には影響しない方法としている。内部は、法的不適合な部分について避難安全検証法によって安全性を確認し、旧館1階エントランスホールなどの歴史的意匠の形態を保全し、またフローリングや内部建具においても既存のものを美装の上で再利用するなど、保存・活用とコスト縮減を両立していると感じた。環境面では、用途変更に伴いセントラル熱源から個別空調に変える事による使用に合った運用と、設備機器の高効率化や太陽光発電の設置の実施によって、年間一次エネルギーの削減がされている。長期活用を前提とした法的遡及、防災設備環境改善のための更新工事が全面的に実施されている中で、既存のガラスブロックを保存しながら採光を確保し、排煙確保の為に新設ガラストップライトを設置することでさらに自然採光を大いに利用している。 又、既存スピーカーを照明として改良する工夫や、生糸検査機器を残し、カフェのテーブルとして再使用するなどユニークな取組みがされている。
 KIITOではデザインやアートと生活にまつわる講座やワークショップ、展示、イベントが開催され、企業向けのレンタルオフィスやアトリエは現在入居率100%である。
 「旧神戸生糸検査所」は解体の危機に直面していたものを神戸市が買い取り、市が推進する「神戸の今と未来をデザインしていくことで、人間らしいしあわせを実感できる創造都市」=「デザイン都市・神戸」の、創造と交流の拠点として再整備された。(2008年10月に神戸市はアジア初のユネスコ創造都市ネットワークデザイン都市に認定されている。)この取り組みを大いに評価するとともに、新港地区が神戸を象徴するエリアとして保存・継承しながら新しい神戸らしさを発信しつづけていくことを期待したい。

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