25回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

氷見市庁舎

所在地

富山県氷見市鞍川1060

竣工年

[C棟(旧校舎) ]1966年(昭和41年)
[B棟(旧体育館)]1991年(平成3年)
[A棟(旧体育館)]1996年(平成8年)

改修年

2014年(平成26年)

建物用途

[改修前] 高等学校(校舎・体育館)
[改修後] 市庁舎

建物所有者

氷見市

改修設計者

且R下設計、叶地建築設計事務所

改修施工者

名工建設(本体) 、氷見土建工業梶i外構)
 氷見市の旧庁舎は、防災安全上の課題(耐震性能不足・津波被害の可能性等)や市民サービス上の課題(バリアフリー対応・駐車場不足等)を抱えていた。氷見市はその解決策として、財政負担の大きい新築移転ではなく、社会的共通資産としての建築ストックの活用(廃校となった高等学校のコンバージョン)を選択した。まずは、この決断を評価したい。
 少子高齢化・人口減少に伴う統合で廃校となった高校の2つの体育館と校舎の一部を市庁舎に改修しているが、最も特徴的なのはB棟と呼ばれる旧体育館の蘇生である。高天井・無柱大空間という体育館の特性を活かし、1階(旧テニスコート)は見通しが良く分かり易い市民窓口の場とし、2階(旧屋内運動場)は「まちづくりを考える場」として、市長室も含めオープンで一体感のある執務室となっている。特に、2階は船底型の幕天井を設けることにより、気積を40%低減して空調効率を高めながら、上部窓からの自然光を巧みに利用している。もう一つの旧体育館であるA棟2階は、中央に高天井の議場、外周部に採光が必要な議会関係諸室を配している。
 また、改修設計に際しては、市職員がファシリテーターとなって市民・議員・職員とのワークショップ行い、意見やアイデアを反映して、最小限の改修の中で市民が愛着を感じるような「氷見らしい」市役所の実現を目指した。
 室内の設備に関しては、高天井の開放的な空間を阻害しないよう、照明・空調等の設備機器を違和感無く露出で設置して、メンテナンスおよびレイアウト変更への対応性を高めている。また、露出する配線・配管・機器類を既存躯体に吹き付けた吸音材と共に白色に塗装し、上下配光の照明器具を設置することで、明るさ感を確保しつつ省エネを図っている。さらに、多目的スペースの中央部に設置した4台の床置空調機を囲う掲示板やスクリーンは、コミュニケーションツールとして活用されている。
 主要な設備機器については、受変電設備・非常用発電機・空調室外機等を、建物全体の中央に位置するエントランス棟と渡り廊下棟の裏に集中配置し効率化を図る等、機能性を重視し、イニシャルコストとランニングコストを抑えた管理しやすい計画がなされている。
地方創生時代の新たな公共施設のあり方を実践した先進事例として、高く評価したい。

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