24回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

東京駅丸の内駅舎

所在地

東京都千代田区丸の内1-9-1

竣工

1914年(大正3年)

改修年

2012年(平成24年)

建物用途

駅舎、ホテル、ギャラリー

建物所有者

東日本旅客鉄道

改修設計者

潟Wェイアール東日本建築設計事務所

改修施工者

鹿島建設梶A清水建設梶A鉄建建設

「赤レンガ駅舎」として国民に長く親しまれてきた東京駅丸の内駅舎は、大正3年竣工の他に例を見ない大規模な鉄骨レンガ造の駅舎である。しかし昭和20年の東京大空襲により被災し、戦後の復興工事による姿のまま60年以上使い続けられてきた。建物所有者であるJR東日本において、保存と復原に向けて具体的検討が進められ、平成12年に創設された特例容積率適用区域制度による丸の内駅舎の未利用容積の周辺街区への移転による資金上の解決と、平成15年5月の国の重要文化財認定が実現に向けてのこのプロジェクトの大きな後押しとなった。  そして、この重要な建築物の安全性・機能性の向上を図りながら、さらに長い将来にわたって恒久的な保存・活用を実現することをプロジェクトの基本目標として、駅だけではなくホテル・ギャラリー(美術館)という複合機能を持つ大規模な文化財の現代的活用を実現した。
 まず、基本方針として、「構造」「保存・復原」「施設計画」という3本柱を設定している。「構造」としては、重要文化財を永続的に保存するため、免震工法を採用し、鉄骨内蔵レンガ壁や床組鉄骨などの既存架構を構造体として極力活用し、新たな補強を軽減している。しかし、全長335mの駅舎を残したまま地下を構築するための施工は、一旦駅舎を仮受けする必要があり、そのために必要な杭工事は、困難をきわめている。大部分が駅舎内での杭打ち作業となるため、空頭が低くても施工できる機械(TBH・BCH工法)を用いるなど新工法を採用し、地下躯体構築後に、1階躯体との間にアイソレーターとオイルダンパーを設置している。
 「保存・復原」については、創建時のものである既存レンガ躯体と鉄骨および広場側既存外壁を保存し、失われた3階外壁は新躯体を設置の上、化粧レンガ・花崗岩・擬石で、屋根は、天然スレート、銅板で、また南北ドームの内部、3・4階の見上げ部分も創建時の姿に復元している。
 「施設計画」としては、創建以来の「駅」「ホテル」としての機能にその後加わった「ギャラリー」としての機能を更に充実させて、未来へと継承している。特に中央部4階は、改修前は屋根裏であったが、トップライトを設けた天井高9mのアトリウム空間として、ホテルのレストランとして活用されている。
 設備的には、駅舎の免震化による地下階の増築により、設備機械室の増設がなされ、ホテル関係やギャラリーを中心に熱源から空調方式まで既存システムを変更し顧客の快適な環境の提供につながっている。
 東京駅丸の内駅舎は、歴史的な都市軸「行幸通り」の正面に位置し、首都東京の顔であり続けており、この保存・復原は、辰野金吾設計の日本を代表する建築遺産をただ単に保存・復原するのではなく、過去100年近くの 歴史を生き続けてきた現役の鉄道施設として、再び未来に向けて使い続けていくところに、大きな意義がある。

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