21回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

ローム京都駅前ビル

所在地 京都府京都市下京区塩小路通烏丸西入ル東塩小路町579−32
竣工 1977年(昭和52年)
改修年 2010年(平成22年)
建物用途

自社オフィス(改修後)
テナントオフィス(改修前)

建物所有者 ローム
改修設計者

樺|中工務店

改修施工者

樺|中工務店

この作品は、京都市内に本社を置く総合半導体メーカーが自社ビルとして取得した中規模の既存ビルを、「駅前都市景観への貢献」「環境負荷低減」「耐震性・快適性の向上」をテーマとして、既存躯体を再利用し、仕上げと設備を全面更新することで新築同様に再生させた意欲的なリフォームプロジェクトである。
 JR京都駅からの視線に配慮したファサードは、塔屋一層を解体し、近隣ビルとスカイラインを合わせた京都伝統の格子形状のダブルスキンカーテンウォールに更新することで、先進企業の自社ビルらしい端正な佇まいとなり、夜間のLED照明による「京の光暦」(石井幹子事務所)と名付けられた、多様なパターンで京の四季を表現したライトアップと併せて、駅前の景観形成に大きく貢献している。又、京都タワーからの見下ろしとヒートアイランド現象の抑制を意識した屋上緑化・屋上壁面緑化も都市景観に潤いを与えている。
 環境負荷低減策として、自社製品でもあるLED照明採用・太陽光追尾センサー付ブラインド内蔵のダブルスキンカーテンウォール・ダブルスキンによる自然換気・自然光センサーによる自動調光制御・雨水と空調ドレインの再利用・高効率機器(個別空調システム・変圧器)の採用・外気量CO2制御・太陽光発電設備設置などにより、年間一次エネルギー使用量を改修前比較で41%減の1704MJ/u・年に削減し、CASBEE省エネ改修のSランク相当の環境負荷低減を実現している。また、運用においてはBEMSによる省エネの見える化を行い、デマンド制御により最大使用電力の制御を図っている。
 構造に関しても、既存躯体を全面的に再利用し、耐震壁の増強や鉄骨ブレースを設置することでバランスの良い耐震補強となり、道路に面して開口を拡大して執務空間の開放感を獲得しながらIS値0.6以上を実現している。
 地上階は改修前より天井を高くし、なおかつOAフロアーを敷設するなど建築的な配慮と各種先進設備の導入で快適な執務空間となり、空調方式の変更などにより生み出された地階の会議室や食堂もLED照明と内装の妙により、地下の閉塞感は全く感じられない。
 宿泊施設や観光施設に近接する京都駅前という立地条件の中で、この様な既存ビルの全面改修を実施するに際して、安全・騒音・振動・塵埃に対する施工サイドの措置は万に一つの遺漏も許されない厳しいものとなる。それに加えてプロジェクトのテーマにも繋がる環境配慮としての徹底した3R(リデュース・リユース・リサイクル)活動や綿密な施工計画に基づく資材・廃棄物の搬出入を実施し、更に仮囲いにも都市景観を乱さない配慮が為されるなど、施工者の意思と努力にも敬意を表する。
 就業社員に対象者がいないためかバリアフリーの未対応に疑問はあるものの、ストック活用が求められる今、環境配慮型ビル再生のモデルプロジェクトとして高く評価したい。

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