20回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

住友商事竹橋ビル

所在地 東京都千代田区一ツ橋1−2−2
竣工 1970年(昭和45年)
改修年 2009年(平成21年)
建物用途 事務所
建物所有者

住友商事

改修設計者

鞄建設計

改修施工者

椛蝸ム組

住友商事竹橋ビルは、1970年に竣工した築後40年を経過したオフィスビルである。これまで、20年目に設備の一部更新、30年目に内装を含む大規模改修など継続して維持管理に取り組む中で、今回「環境リノベーション」をテーマに、建物の環境負荷低減、安全性の向上、外構の緑化推進による都市環境改善を行い、その意欲的な取り組みが高く評価された。
  この緑化計画は、都心に立地するオフィスビル周辺に豊かな緑を配し、オフィス街に集う人々に憩いの場を提供すると共に、ヒートアイランド化の負荷低減を意図して行った。皇居の森は夏季において周辺都心部より約4℃も気温が低く、都心のクールアイランドを形成している事は広く知られている。この建物は皇居の近傍に位置し、緑化計画が皇居につながるグリーンネットワーク形成の一助となることも意図して取り組まれていた。オフィスビルの外構は、一般的にメンテナンスの負担を軽減するために舗石などでカバーされ、その緑被率は限定的なものが多かった。この建物も改修前は緑被率が8.5%であったが、今回の改修により約5倍の41.3%となった。改修にあたっては緑化部分の一部に起伏を設け、110種の植物を植栽して多様性に配慮するとともに、起伏の変化と四季折々の彩を楽しめる景観を生み出している。また、自動冠水設備やEPS(発泡スチロール)人工地盤を活かした自然な排水を促す工夫により、メンテナンス性にも配慮した計画としていた。外構につながるエントランスホールは、ガラススクリーンを明るく透明感のあるものに改修し、内部壁面に壁面緑化を行うことで内外が一体となった緑化空間を楽しめる計画としていた。新たに加わった植栽などで死角が生じ、犯罪を誘発することの無いように防犯カメラの再配置や威嚇用スピーカーの設置などきめ細かい配慮も行われていた。
  環境・省エネ対策では、既に完了している熱源設備の高効率機器への更新に加え、今回改修部分の照明器具のLED化により照明消費電力の35%削減、基準階トイレを節水型便器や自動水栓に取り換えることで使用水量の58%削減を実現していた。
  その他、地下1階のコンビニエンスストアーや外構と一体的利用のできるカフェの誘致、基準階水廻りでの設備やスペースの充実、バリアフリー化推進の取り組みなどオフィスワーカーや来館者の利便性向上にも積極的に取り組んでいた。
  これまで継続的に行われてきた改修工事と今回のリフォームでこの建物は、現在の社会ニーズに応えられるオフィスビルに生まれ変わった。今後の維持管理についても所有者、管理者、設計者、施工者間で継続して検討されていることが、この建物のロングライフ化につながると期待される。

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