31回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長  三井所 清典

 BELCA賞は良好な建築ストックが現代社会の中で生き生きと活用され、未来に引き継がれることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も長期保全の計画がある模範的な建築をロングライフ部門とし、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門として選考し、平成3年から昨年までの表彰件数は296件を数えている。

 BELCA賞への関心は年々高まっているが、現代社会で活用されるためにはロングライフ部門でも耐震改修や設備の抜本的現代化が必要であり、ベストリフォーム部門では建築寿命の長期化に伴い、利用者の建物への愛着を重んじる傾向を深めている。そのような事情等から両部門の境界は明確ではなくなっている。

そこで近年の部門の仕分けは原則として申請者の意図を尊重することとし、あらかじめ両部門の表彰件数を定めず合わせて10件を選考することにしている。今年はロングライフ部門が3件、ベストリフォーム部門が7件となった。表彰された建築物は次のようなものである。

 

 ロングライフ部門

・昭和50年代初期の約千戸の中・高層集合住宅団地で、管理組合は計画時の色彩、セントラル給湯、緑地、小公園等を維持し、これまで3回の大規模改修を実施して長寿命化を実現している団地。

・前庭の地下に大規模の書庫を増築することで、周辺環境の保全と関東大震災後の昭和初期の記念的建築の外観を維持し、同時に新築時の内部空間を蘇らせた大学図書館。

・明治の初期赤坂仮皇居御会所が2度の移築と現地での改修を受けていた木造建築を耐震改修と設備の更新工事の機会に、形態・意匠が復元されたホテルの宴会場。

 

ベストリフォーム部門

・平成の初めに開校した大学を20年後に買い取り、ミッションスクールらしい外観を継承し、内部は執務席を固定しない自律的な作業空間を造り出すなど有機的な空間に変えたメーカーの事務所。

・昭和初期に建設され、地域の人々に愛されていた小学校の外観を継承し、高い階高と校庭を活かしてコンバージョンした都心の低層のホテル。

・昭和の高度経済成長期の超高層ビルの制震改修と足元の公開空地に大きなガラス屋根を架けてアメニティの高い多目的広場を実現した副都心の事務所ビル。

・明治中期から大正・昭和初期にかけて増築整備され、今回の耐震改修、防災改修及びバリアフリー化を機会に昭和初期の完成時を基準年として、外観を保全し、内装を蘇らせたクラシックホテル。

・昭和55年建設されたRCの地方庁舎を耐震改修して骨格を活かし、内部を地域産材の木材で木質化し、外部はタイル貼りのファサードをガラスで覆って保全した図書館。

・昭和59年竣工の町民ホールと隣接した振興局の機能を見直し、使い易い小ホールと交流スペース、図書館と振興局が市民にとって使い易くまとまった複合的公共施設。

・昭和の高度経済成長期につくられ、近年の観客の増加とオリンピックの野球とソフトボールの会場として増築改修され、交流しながら野球を楽しむボールパークとしての質を確保した野球場。

 

 今年の表彰建築物の建築年齢は141歳、131歳と100歳超が2件あり、94歳、89歳と80歳超も2件あった。706050歳代の建築はなく、40歳代が4件、30歳代が2件あった。80歳代以上の長寿建築はいずれも意匠性が高く、所有者にも利用者にも大切にされており、さらに年齢を刻んでいくと思われる。40歳代30歳代の比較的若い建築も使い易さを目指して、壁を取りはずしたり、木質化したり、バリアフリー化したり、屋根を架けたりして快適化に努めており長寿命が期待される。

 改修の主な動機は耐震改修が多く8件であり、市町村合併による公共建築の機能見直しが2件、所有者・事業者が変わって新しい用途に変更したケースが2件あった。改修工事は表彰建築物10件のすべてが大規模であり、改修目的に外観の継承が意識されたものが殆どであった。この二つの改修要件はロングライフ部門とベストリフォーム部門の区分が単純でないことを示している。

 最後に惜しくも選にもれた建築物については、充実した内容で再度の応募を期待したい。

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