27回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、適切な維持保全が長年にわたり今後も、長期保全の計画がある模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門として、平成3年から昨年までで、表彰件数は256件を数えている。
 BELCA賞への関心は、年々高まりつつあるが、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門でも設備の抜本的現代化が必要であり、ベストリフォーム部門では、建築寿命の長期化に伴い利用者達の建物への愛着が増している。そこで近年は、両部門の件数をあらかじめ定めず、合わせて10件を選考することにしており、本年はロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件となった。
 今回表彰されるロングライフ部門では、87年前の創建当時の意匠を蘇らせた公会堂、中間階免震改修による電波塔、90年前の姿を維持したクラシックホテル、そして、市民協働の場となっている我が国唯一の版画美術館が入選した。
 また、ベストリフォーム部門では、一階柱頭免震を採用した老舗ビル、歴史的図書館を保存した物販店、当初の意匠はそのままに新たな性能に対応した博物館、築43年でありながら新築同等の競争力を持たせた超高層ビル、大型物販店舗を市民に親しまれる空間によみがえらせた市役所、そして、モダニズムの名建築の機能向上を実現した劇場が入選した。
 これらの建築物をみると、ロングライフ部門では竣工後30年をわずかに超えたものがあるのに対し、ベストリフォーム部門には90年を越えるものもあり、建築年齢上からも両部門を区別するのは難しかった。
 また今回は、群馬県の所有する建築物がロングライフ部門とベストリフォーム部門の双方に入選したことが特筆される。
 応募作品の水準が年ごとに高まっていることは、昨年以上に感じられるが、惜しくも選に漏れた建築物については、更に充実した内容で、再度の応募を期待したい。
 BELCA賞の周知の範囲は次第に広まって、未だ受賞建築物を持たない地域は7県になった。しかし、更に全国的普及を目指す賞の趣旨から、未受賞の地域からの応募を切に期待したい。

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