26回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も、永く維持保全される計画がある模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門とし、平成3年から昨年まで、表彰件数は246件を数えている。
BELCA賞への関心は、年々高まりつつあるが、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門でも設備の抜本的現代化が必要であり、ベストリフォーム部門では、建築寿命の長期化に伴い利用者達の建物への愛着を重んじる傾向が増している。そのため近年は、両部門の件数をあらかじめ定めずに、合わせて10件を選考することとしている。本年はロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件となった。
今回表彰されるロングライフ部門では、80年前の高級技術を細部まで保存した邸宅、半世紀を超える優れた維持管理で現在の技術水準に適合することが解った教会、公園の土に埋もれて見事に維持されている体育館、流行の先端を行く町並みを構成する建物のリフォームではないリハビリテイションが入選した。
また、ベストリフォーム部門では、解体の危機に面していた建物を全く新しい用途で再生した文化財的価値ある建物、材料にこだわらないで最新の技術により原設計を復原した安田講堂、改修建物を新築建物と一体化した市庁舎、御堂筋に並ぶ建物に一体感を造りだしたオフィスビル、江戸のウォーターフロントらしい歴史的建造物の増築と保存、外観も内観も当初のイメージを変えず性能を蘇らせたホールが入選した。
これらの建築物をみると、ロングライフ部門では竣工後40年に満たないものがあるのに対し、ベストリフォーム部門には90年を越えるものがあり、建築年齢上からも両部門を区別するのは難しいのが、現状である。
入選物件は何れも力作で、応募作品の水準が年ごとに高まって居ることは、昨年以上に感じられた。惜しくも選に漏れた建築物も多かったので、それらについては、更に充実した内容で、再度の応募を期待したい。
今回は新たに滋賀県と鳥取県からの受賞があり、BELCA賞の周知の範囲は次第に広まってきたが、未だ受賞建築物を持たない地域が7県あり、建築物の維持保全技術の全国的普及を目指す賞の趣旨から、未受賞の地域からの応募も切に期待したい。

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