26回BELCA賞ベストリフォーム部門選考講評

 BELCA賞選考委員会副委員長 深尾 精一

今回はBELCA賞としての表彰件数10件の中で、6件がベストリフォーム部門での表彰対象となった。昨年はロングライフ部門から多数選ばれたが、今回は、近年の傾向通りの結果となっている。当初の建築についてみると、戦前に建設されたものが三件、戦後のものが三件となっている。
 東京大学大講堂は、今回の受賞作品の中では最も古い建築であるとともに、「安田講堂」として、広く社会に知られている建築である。東京大学の象徴であり続けてきた、典型的なロングライフの建築であるが、今回はベストリフォーム部門としての受賞となった。耐震化・バリアフリー化がリフォームの課題ではあったが、建築の扱われ方の激動の中で失われたものを創建時の意匠に戻すために、様々な技術が駆使されていることが高く評価された。しかし、主たる機能は維持されたリフォームである。
 一方、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)はほぼ同時期に、生糸の輸出時の検査施設として、港町神戸に建設されたものである。その歴史的使命は終わっており、全国的に著名な建築であったわけではないが、神戸市にとっては歴史的建造物であり、解体の危機に合ったものを再生したものである。その存続を第一の目的とし、コストを抑えてあまり手を加えずに、様々な創造的活動の場となるようなコンバージョンが行われている。東京大学大講堂とは対照的なリフォームであるが、類似する建築の活用のためには、参考となる事例といえよう。
 日本橋ダイヤビルディングも同時期に建設された、都市内の本格的な倉庫である。特徴的な外観意匠を残しつつも、高層ビルに生まれ変わらせるというプロジェクトは、それほど珍しいものではなくなっているが、免震の仕組みの取り入れ方などに、従来のものとは異なる工夫がなされている。そうした中で、性能の高い都市型倉庫としてリフォームをしていることは、建築の歴史の継続という観点からも特筆すべきであろう。それを可能にした高度な設備改修やBCP対応なども、ベストリフォームと呼ぶのにふさわしい。
 米子市公会堂は、村野藤吾による建築作品で、戦後の公共建築として高く評価されていたが、耐震性に大きな課題を抱えていたものである。特徴的な空間構成を変えることなく耐震補強をすることは至難と思われたが、様々な技術的工夫により適切な解を得ている。飛躍的な価値向上がなされたわけではないが、この時期の建築の耐震改修が当初の建築作品としての価値を損ないがちな中で、市民にとっても望ましい形で成功したリフォームの事例と言えよう。
これに対し日本生命保険相互会社本店の南館ビルは、民間の建築として、所有者の強い意志によりなされたリフォームである。御堂筋という大阪の大切な景観に対して、より貢献しようとする公共性のある意志が感じられるところがポイントであろう。御堂筋に対して並ぶ本館の意匠との一体性が狙いとなっており、窓の配置の変更や外壁に用いた花崗岩の素材感などに心が配られている。オフィス機能の向上や設備の更新・BCP対応なども行われているが、主として街並み景観のためのベストリフォームとなっている。
 以上の作品に比べ、長浜市庁舎はリフォーム対象となった建物も1986年竣工と比較的新しく、一体となって機能している建築は、新築部分の比率も大きいプロジェクトである。もともと市民病院として建設され、それを庁舎として活用していたものを、大胆なリフォームによって、新築としか見えない市庁舎の一部にしていることが画期的である。様々なリノベーションのための手法が駆使され、既存ストックの活用がなされている。
 以上のように、今回の表彰対象は、当初の建築が高名な設計者によるものもあれば、特に建築作品としては注目されていなかった建物の利活用の事例もある。また、典型的な公共建築もあれば、純粋に民間のオフィスビルもあり、多様な結果となった。いずれも、リフォーム後の建築が、利用者に愛される建築であり続けるであろうと感じられるものである。

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