25回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストックが現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞は2部門で、長年にわたり適切に維持保全され、今後も永く継続されることが計画されている建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームで、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門としている。平成3年から昨年までの表彰件数は、ロングライフ部門:105件、ベストリフォーム部門:131件、あわせて236件を数えている。地球環境問題が顕著化しつつある昨今、BELCA賞への関心は、持続可能な社会に向けて高まってきたといえる。
建築が、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門でも設備の抜本的改修が必要であるのに対し、ベストリフォーム部門では建物に蓄えられた記憶が尊重されるようになった。そこで、近年は両部門分けずに合わせて10件を選考している。ここ数年は、ベストリフォーム部門がロングライフ部門を上回る状況が続いたが、本年度はロングライフ部門7件、ベストリフォーム部門3件と、逆になった。
ロングライフ部門では、長期使用を意識した設計で、住民に愛されている大規模分譲型集合住宅、地域のシンボルであった市役所の外観を維持した図書館、貿易商の邸宅をその姿のまま活用したレストラン、文化財の価値を保ちながら内装を改修した大学本館と附属図書館、創建時のデザインコンセプト堅持し、維持・保全の計画がなされている大学講堂、創建当時の意匠で大阪のシンボルである、築85年の銀行本店、関東大震災や戦災を乗り越えている大学キャンパスが、選に残った。
ベストリフォーム部門では、大規模改修により入館者数が飛躍的増加した水族館、廃校となった体育館をコンバージョンした市庁舎、道路をへだてた増築部分の一体化を図った百貨店が、選に残った。
これらをみて実感されることは、建築寿命を延伸する新たな技術が次々と開発されていることである。
この度は優れた応募建築物が多く、惜しくも選に漏れた建築物もあったが、それらについては条件を整えた上で再度の応募を期待したい。また、BELCA賞の周知は広まりつつあるが、未だ受賞建築物のない県が9県ある。建築物の維持保全技術の全国的普及を目指す本賞の趣旨から、未受賞の地域からの応募も切に期待したい。

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