第25回BELCA賞ロングライフ部門選考評

 BELCA賞選考委員会副委員長 深尾 精一

今回はBELCA賞としての表彰件数10件の中で、7件がロングライフ部門での表彰対象となった。1991年以来のBELCA賞を5年ごとに見てみると、最初の15年間はロングライフ部門とベストリフォーム部門がほぼ同数であったが、16回〜20回はロングライフ部門が4件ずつ、そして21回以降は同部門が3件の年が3回と、ベストリフォーム部門からの表彰が多くなってきていた。それに対し、今回はロングライフ部門から7件と、過去最大件数となったことが大きな特徴であろう。
 また、24回までにロングライフ部門で表彰された105件中、戦前に建設されたものは30件であったが、今回は7件中5件が戦前に建設された建築であった。それらは、大学施設2件、公共建築物1件、銀行建築1件、住宅1件と多様であり、長く使い続けることになった経緯も様々であった。
 大学施設の2件は、時間とともに変容していくキャンパスの全体計画の中で、複数の建物が大切に活かされながら使い続けてきたということが評価されたものである。国立と私立という違いはあるが、学生たちが学び研究し巣立っていく環境に相応しい、思い出に残る施設群を維持したいという想いは共通であろう。一方、三井住友銀行大阪本店ビルは、当初の存在感のある建築を活かしながら、オフィス環境や耐震性能、設備などを一新していることが評価されている。
 北九州市立戸畑図書館は、旧戸畑市の市役所として建設され、庁舎建築として使い続けられてきたものを、画期的な耐震改修手法を用いて図書館として再生したものである。選考委員からはベストリフォーム部門の方が相応しいのではないかとの声も出たが、公共建築としてロングライフであることを評価してほしいという申請者の想いが認められたものである。そのことをもってしても、幸せな長寿命建築であると言ってよいであろう。
 以上のような、周辺の建築との関係性も評価の対象となる建築に対し、旧ジェームス邸は、その豊かな敷地環境ゆえに解体され再開発される恐れもあった単独の建築であるが、関係者の熱意によって、新たな機能の建築として保存活用されることになったものである。このような経緯をもつ建築を顕彰することはBELCA賞の責務ではないだろうか。
 一方、戦後に建設された2件も、マンション1件、大学施設1件と、異なったジャンルの建築である。千葉大学ゐのはな記念講堂は、戦後に建設され既に50年以上が経過しているが、その古さを感じさせない建築である。リフォームを経ているが、当初の優れたデザインの建築を使い続けたいという関係者によってロングライフとなっている。
 大倉山ハイムは、特に豪華というわけではない一般的なマンションであるが、長持ちする集合住宅を造りたいという、当初の設計意図が十分に活かされて使い続けられている建築である。1970年代にパイプシャフトを住戸外に設けるなど、現在の長期優良住宅で要求されていながらも、市場の中では未だに少数派である様々な工夫がなされており、それがロングライフに貢献していることは特筆すべきであろう。管理組合と管理会社との関係も良好であり、まさにBELCA賞が顕彰すべきタイプの建築である。
 今回のロングライフ部門の表彰対象は多岐に亘った建築であり、部門としての特徴を述べることは困難であるが、総じて、そのロングライフの価値を認識されて使われている、幸せな建築と言ってよいであろう。

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