25回BELCA賞ベストリフォーム部門選考講評

 BELCA賞選考委員会副委員長 鎌田 元康

今回・第25回のBELCA賞の応募件数は、昨年より微減したものの、二部会制による選考の廃止に伴い、一つの委員会にて両部門の選考を行うこととし、表彰件数を「各部門5件以内」から「両部門合わせて10件以内」とするなど、選考規定を改定した2001年度・第11回以来のほぼ平均的な件数であった。第11回以来、常に10件が表彰されているが、第11回〜第14回はロングライフ部門・ベストリフォーム部門同数であったものが、その後前回まではベストリフォーム部門の方が表彰件数の多い状況が続いた。しかし今回は一転し、ロングライフ部門7件、ベストリフォーム部門は、BELCA賞創設以来最低の3件となった。
 表彰案件は、全国の水族館の多くが1990年前後のバブル経済期に相次いで開館しているため、近年、経年劣化による大規模修繕時期を迎える「2020年問題」という経営課題を抱えており、さらに、少子高齢化の進展もあり、単なる施設修繕のみでは今後の来館者ニーズに対応することが困難と判断した上で、生物を身近に感じられる見易さを追及するために展示空間の再構成を図り、駐車場から水族館への長く単調なアプローチ部分に身近な新潟の自然の理解に役立つ「にいがたフィールド」を新設し、展示順路に沿ったバリアフリールートを確保するなど、きめ細やかな配慮のもとリフォームがなされている(2010年3月付の「新潟市水族館リニューアル基本計画」がネット上で公開されている)新潟市水族館、防災安全上の課題(耐震性能不足、津波被害の可能性等)や市民サービス上の課題(バリアフリー対応、駐車場不足等)を、財政負担の大きい新築移転ではなく、社会的共通資産としての建築ストックの活用(廃校となった高等学校のコンバージョン)で解決すべく、校舎の一部および2つの体育館を利用し、特に体育館の高い天井高、高い位置の窓という特性を活かし、かつ、気積を減らし空調負荷を増やさない工夫をした上で、気持ちのよい各用途の空間を、設備的な種々の工夫を加えて造り出した点が評価された氷見市庁舎、手狭となった売り場面積の拡張を、既存本館と増築用地の間にある区道を廃道とし(2層吹き抜けのパサージュとして利用)、分断されていた街区を一体化することにより実現しているが、その際に、全館避難安全検証法と消防性能規定ルートC(大臣認定)、都市再生特別地区制度などを有効に活用し、かつ、既存部分と増築部分の間の空間処理が見事であり、建物の再生だけでなく、街路空間を活性化して回遊性を高めることにより、賑わいのあるまちづくりにも貢献している三越銀座店という、建物用途、解決すべき課題が大きく異なる3件である。表彰件数こそ過去最低の3件であったが、すべて今後のリフォームのあり方を考える上での多くの示唆を含む内容の案件であった。
 3案件とも環境・設備面でも種々の工夫をしている上に、今後の維持・保全、更新に配慮した改修を行っていること、三越銀座店では延べ面積65%増に対しCO2排出量が5%増に抑制されていることなど、評価に値する点が多々あったことも今回の表彰建築物の特徴といえよう。

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