第22回BELCA賞選考総評
BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストックが、現代社会の中で生き生きと活用されることを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、長年にわたり適切に維持保全され、今後も、永く維持保全されることが計画されている模範的な建築物をロングライフ部門、社会の変化に対応したリフォームにより、見事に蘇生した建築物をベストリフォーム部門とし、平成3年から昨年まで、表彰件数は206件を数えている。そして、ロングライフ部門では、所有者、設計者、施工者、維持管理者の4者を、ベストリフォーム部門では、所有者、改修の設計者、施工者の3者を表彰している。
昨今の地球環境問題にともない、BELCA賞への関心は年々高まりつつあるが、現代社会の中で活用されるためには、ロングライフ部門では、設備の抜本的現代化が必要であるのに対し、ベストリフォーム部門では、歴史的記憶が尊重される傾向が増している。そのため、近年は両部門の件数を分けずに、合わせて10件を選考している。従って本年はロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件となった。
 今回表彰されるロングライフ部門では、歴史ある銀行の本店を地域の情報発信拠点として活用している展示館、50年にわたり活用されているオフィスビル、高さ12mのレンガ壁に鉄筋を通して耐震補強をした大学本館、所有者・用途の変遷を経ながら、築100年を迎えた寺院の伝道場が選に残った。
 ベストリフォーム部門には、東日本大震災で避難所としても活躍した野球場、地域の景観として長く親しまれた姿をガラスのダブルスキンで保存した銀行本店、デパート撤退後の中心市街地の活性化を目指した集合専門店ビル、仕上げや設備等の改修をしながら初期の姿を再現した美術館がある。また今回は、ホテルなどの複合建築が2件あり、団体観光客の減少に対して客室棟を減築し、共用部分を地域住民対象の温泉浴場にしたものと、「総合設計制度」の適用を外して、一般法規での適法性を確保したものが選に残った。更に、今回は、以前ロングライフで受賞したものがベストリフォームで再受賞した。
 これらの建築物をみると、名実ともに建築寿命を延ばすための新たな技術が、次々と開発され定着しつつあることが実感される。
 応募作品の水準は年ごとに高まり、惜しくも選に漏れた物件も多かったが、それらについては条件を整えて、再度の応募を期待したい。
 BELCA賞も周知の範囲を広めつつあるが、今回新たに福島県と鹿児島県からの受賞があった。建築物の維持保全技術の全国的普及を目指す賞の趣旨のもと、未受賞の地域からの応募を切に期待したい。

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