第22回BELCA賞ロングライフ部門選考評

 BELCA賞選考委員会副委員長 鎌田 元康

 今回、第22回のBELCA賞の応募物件総数は、昨年より微増したものの、ロングライフ部門に限ると応募件数は逆に減少した。しかしながら、例年どおり激論の場となった「ロングライフ部門」「ベストリフォーム部門」合わせ10件以内という表彰物件を決定する会議において、昨年度より1件多い下記4件が受賞作品となったことが示すように、ロングライフ建築のお手本ともいうべき物件の応募が多く、種々学ばせていただいたことに選考委員会の一人として感謝したい。

 「旧唐津銀行本店」(1912年竣工)は、唐津で創設された唐津銀行の新本店として、辰野金吾の愛弟子・田中実(清水組)により設計され「辰野式」の外観意匠を全面的に採用した煉瓦造地下1階、地上2階の建物である。同銀行は、佐賀中央銀行、佐賀銀行と名称を変更し、当該建物は佐賀銀行唐津支店として利用されていたが、1997年の新支店への移転による閉鎖後、土地・建物が佐賀銀行から唐津市へ寄贈され、歴史的価値を踏まえた「保存検討委員会」が発足し、保存活用計画策定と構造調査が行われた後、20ヶ月余の工期を費やした復原工事を行い、催場・展示施設として再生された。当時の残された写真などを基に丁寧な改修施工が行われ、特に屋根は小屋組みからの全面的な改修工事により、防水下地処理をした上で当初の天然スレート葺きに戻され、辰野式を復元した外壁の改修とともに創建時の形を復元しており、当初金属製であった1階カウンター格子は、戦時中に供出され木製に変えられたが、往時の姿が良く保存され、現在では貴重な見応えのあるものとなっている。資料館としての活用の他、地階はドライエリアからの光を有効に取り入れたレストランとして利用され、多目的ホールも市民活動の拠点となっており、市のシンボルとして地域振興に大きく貢献している。

 「住友ビルディング」(1962年竣工)は、隣接する住友財閥の経営統合本部ビルとして建設された住友ビルディングが狭隘化したため、住友グループ各社が移転するために建設された建物であり、築50年を経過した現在も住友グループのシンボル的存在となっている。83.8m×68.3mの正方形に近い平面に、奥行き18.6mの事務室を四方に持つセンターコアの基準階、12階建て高さ45mのオフィスビルであり、9.3m×6.2mの均等スパンのシンプルな構成であるが、横連層バルコニー付でおとなしいが飽きさせないファサードとともに築50年を経過した現在でも古さを感じさせないものとなっている。建築的な改修は既存サッシにガスケットを取付けての窓ガラス複層化と、エレベータホール内装や地下食堂内装の改修程度である。設備的な改修としては、氷蓄熱の導入、ペリメータ部分へのGHPの導入、省エネ型Hf照明器具と照度センサーの採用、エレベータ数の16基から12基への削減と、不要となったエレベータシャフトのターミナル空調スペースとしての利用、BACnet・BEMSの導入によるエネルギー監視・制御などを行い、現代ビルが必要とする省エネ・快適性能を確保しており、また、ロボットによる床掃除などの新たな取り組みも開始している。

 「清泉女子大学 本館」(1915年竣工)は、ジョサイア・コンドル晩年の設計によるイタリア・ルネサンス様式を基本としたヨーロッパ折衷主義の住宅として建設され、日銀への売却、GHQの接収などを経て、現所有者である清泉女子大学が購入した後、学生が利用する教室・聖堂の他、会議室・理事長室・学長室などを設置し、大学の重要施設として活用されている建物である。屋根・小屋組みの補修、屋根葺き材の更新、内部塗装の復元など、経年劣化した部分が丁寧に修復されており、設備面でも、内装などを損なわない工夫をしながら、スチーム暖房やパッケージエアコンから、高効率ビルマルチ型パッケージに更新され、照明設備の高効率化と併せて、省エネルギー化がはかられているが、特筆すべきは、実大モデルを用いた性能確認実験を行った上で、建物の内装等の価値を損なわないよう、削孔中に極低温に冷却した空気を送り込むという水を使わない工法を用い、煉瓦壁体の中に縦に孔を開け、PC鋼棒を挿入してプレストレス補強し、目地のせん断強度を高めるというわが国初めての工法を用い耐震補強を成功させており、また、それら改修工事を、建物を使用しながら、施設利用への影響を最小限に抑える工夫をしつつ完成させたことである。

 「西本願寺伝道院」(1912年竣工)は、伊東忠太の設計により、真宗信徒生命保険会社の本社屋として建設され、その後、銀行、事務所、研究所、診療所と時代ともに用途を変え、1973年に浄土真宗の布教使を育成する伝道院となった、京都市内西本願寺に程近い路地に面して建つ、シンボルとなるドーム屋根を頂く八角堂を持つ個性的な外観の建物であり、木と鉄のハイブリッド梁や跳ね出し部のI型鋼梁の採用など、当時としては技術的にも斬新で意欲的試みがなされている。今回の改修では、「文化財的価値の保全と有効活用の調和を図る」方針で「修復」に徹して臨んでおり、煉瓦壁内部縦方向に鉄筋を貫通挿入・床内部への鉄骨水平ブレース組み込みによる外観を変えない耐震補強、内外装部材の原形を修復する形での保全、既存鎧戸の固定再利用・既存窓枠に新設サッシを隠すなどの工夫を凝らしたサッシ周りの改修などの他に、設備面でも、現代の技術を活かした省エネ改修を行いながら、歴史的価値のある仕上げを傷つけないように細やかな意匠上の配慮がなされており、さらに、メリハリの効いた省エネ対策が実施されている。部屋・部位により多種多様に異なる床や天井のデザインのすべてを詳細なCAD図面とし、記録保存を図っている点も高く評価された。
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