第21回BELCA賞選考総評
BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉

BELCA賞は、良好な建築ストック、つまり社会の中で生き生きと活用される建築の形成に寄与することを目的に設けられた賞である。賞を2部門に分け、周到な長期計画で、安定した維持保全を継続しているものをロングライフ、活用に翳りの見えてきた建物を、巧みな改修によって現代社会に蘇生させたものをベストリフォームとし、平成3年から前回まで計20回、表彰件数は196件を数えている。
 ロングライフ部門では所有者、設計者、施工者、維持管理者の4者を、ベストリフォーム部門では所有者、改修の設計者、施工者の3者を表彰している。昨今の地球環境問題にともなう建築物の長期利用の 気運を背景に、BELCA賞への関心は年々高まりつつあるが、現代社会の中で活躍するためには、ロングライフ部門でも、熱源、照明、給排水、空調など諸設備の抜本的改造が必要となっている。他方ベストリフォーム部門でも、建物の歴史的経験を保存する傾向が増しているため、近年は両部門を区別しないで合わせて10件を選考している。その結果、本年はたまたま、ロングライフ部門3件、ベストリフォーム部門7件を表彰することとなった。
 今回表彰されるロングライフ部門には、名作の声高いリゾートホテル、球史にとって欠くことの出来ない野球場、新築当時の姿を損なわない耐震補強に成功した大学図書館が選に残った。
 ベストリフォーム部門では、地域の貴重な歴史遺産として保存されていた煉瓦造の県庁舎、これまでにない耐震補強の考え方で容姿を一新させた大学研究室、地道で配慮の行き届いた改修で見事に蘇生した講堂、映画館への転用で地域の活性化を担う絹織物工場、逐次増築で非能率化していた交通拠点を現行法規の中で一体化した巨大な複合施設、中心市街の賑わいを取り戻した商業施設、テナントビルを自社ビルに改造し企業イメージをファサードに表現した駅前ビルと、以上選に残った物件を見ると、いずれも名実ともに、建築の寿命を延ばすための手法が社会に定着しつつあることを実感させる。
 選考委員会を顧みると、本年の応募案件は昨年にも増して優れた物件が多く、委員のあいだでは早くから選考の難しさがいわれていた。応募条件への適合性についても厳密に確認したため、残念ながら選に漏れた物件もあったが、それらについては条件の整備を待って、再度の応募を期待したい。此の分野の技術はますます多角的に展開されていくので、応募作品の水準も年ごとに高まることが予想される。
 回を重ねるにつけ、BELCA賞も周知の範囲を広めつつあるが、今回新たに石川県と山形県からの受賞があった。建物の維持保全技術の全国的な普及向上を目指す賞の趣旨から、未入選の地域からの応募を切に期待したい。

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