18回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

東京タワー
所在地 東京都港区芝公園4丁目2番8号
竣工年(改修年) 1958年(昭和33年)
建物用途 送信施設・観光施設
建物所有者 日本電波塔
設計者 鞄建設計
内藤 多仲(設計指導)
施工者 樺|中工務店
i維持管理者 日本電波塔
 日本のテレビ時代の幕開けを告げた1958年(昭和33年)完成の東京タワーは、高さ333メートルの総合電波塔であり、50年たった今日でも自立鉄塔としては世界一の高さを誇っている。内藤多仲が設計指導を行ったそのシルエットは、都市の記憶として、今も美しく立ち続けている。
 2003年には、アナログ放送からデジタル放送へという時代の要請に応え、特別展望台上部鉄塔の地上250メートルに地上デジタルアンテナを増設、大展望台直下の地上100メートルの鉄塔内にデジタル送信機室を増設。建設時の総荷重3,700トンに新たに計600トンもの荷重が高所に加わったことに対し、電波発信の阻害要因ともなる「鞭振り現象」を起こさないという電波塔本来の機能性と、現在の設計基準でも十分な安全性の両方を満足させるため、制振ダンパーの新設、塔体の鋼板補強、耐震用杭の増設を行った。鋼板補強では当時のリベット溶接をハイテンションボルトに入れ替えるなど様々な技術を駆使し、24時間放送停止無しという厳しい制約下で居ながら工事を完成させている。
 2005年には、塔体下部の低層棟(放送中継施設および観光施設)の耐震補強及び内外装リニューアルを実施、エントランス大庇の改修など観光客への利便性向上も図り、2008年には、大展望台へのエレベーター更新工事を実施。また、1965年以降、5年毎に塔体の塗装替えを実施しているが、発信電波に影響を与えぬよう丸太足場を組んで手塗りで実施している点は特筆すべき事項である。事故の絶無に努めながら、安全性、利便性の向上と、維持管理を継続し、あわせて美観の保全を図り続けて今日に至っている。
 運用管理では、公共放送用の電波塔であることから緻密な管理が必須となっている。電源設備は2系統受電や複数の予備エンジン設置により信頼性の高い電源を確保し、一般管理業務・運転監視業務・日常点検業務の要領・基準を整備して運転管理業務の実施をより確かなものとしている。2006年には施設運営システムを導入し、エネルギー管理や施設運営などの高度化・効率化を図っている。維持保全・改修記録は適切に保管・管理されており、将来の改修計画と良く整合している。
 今後とも公共電波の発信という使命を担った都市施設であり続けるとともに、建設以来、年間300万人以上、のべ1億5000万人という来館者の数が、今も変わらぬ懐かしい観光スポットとして人々に愛され続けていることの証となっている。1989年に一新したライトアップによって、東京の夜景の象徴、ランドマークとしての地位を確かなものとし、以来これまでにも増して日本屈指の国民的な観光拠点としての魅力を発信し続け、50周年を迎えた今日においても燦然と輝くところとなっている。
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