16回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件


日本武道館

所在地:東京都千代田区北の丸公園2-3
竣工年1964
用途  観覧場
所有者:財団法人 日本武道館
設計者:且R田守建築事務所
施工者:樺|中工務店
維持管理者:財団法人 日本武道館

 昭和39年に竣工し東京オリンピックの柔道会場となった日本武道館は、以来42年間、武道の殿堂として各種大会に使用されているのはもちろん、公益的な使命を持つ諸行事や、ポップス系のコンサート会場にも広く活用されている。
 15,000人の観客を収容しその視線が最長40m以内となるよう、内径80mの正八角形にまとめられた平面形状と、富士山の曲線をイメージしたと言われる緩やかな勾配を持った屋根に特徴がある。頂上には避雷針を兼用した銅板張り金メッキ仕上げの擬宝珠が設けられている。
 躯体は鉄筋コンクリート造で、外周の八本のH型鉄筋コンクリート柱から中央に向かって鉄骨トラスを配置して銅板葺き大屋根を支持している。着工から竣工までわずか11ヶ月という短工期は、今日の視点で見ても驚異的である。
 平成12年度には耐震補強が行なわれている。溶接格子フレームを主体としたデザインパネル架構を用い、既存建物の意匠性を踏襲した耐震補強となっている。一般的に行なわれる鉄骨ブレースなどの手法では、建物のほかの部分にはない斜めの要素が違和感を醸し出す可能性があるが、ここで用いられた格子パネルは効果を発揮していると考えられる。
 維持運用管理面では、日常の施設設備に関する運転・点検・整備・清掃等年間総合計画を立てて実施し、年間280日を越える多様なイベントに対応している。
 これまで過密なスケジュールの中、適切な大規模改修が行われており、施設の充実に関しては、せり舞台の設置・電光掲示板の設置・吊り監視設備の設置が行われ、また快適性の向上・機能回復については、トイレの改修・受変電設備の更新(無停電化・オイルレス化)、空調熱源(ボイラー・冷凍機)の更新が行われている。
 また各種診断データに基づき長期修繕計画を立て、今後25年間の維持保全計画を立案しロングライフ化を図っていて、例えばコンクリート中性化対策などの検討がなされている。
綿密な維持管理計画により、時代と共に変わるイベントに対応し、多くの人々に利用されている建物である。