16回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件


旧日銀岡山支店 ルネスホール
所在地:岡山県岡山市内山下1-6-20
竣工年1922
改修年2005
用途:(改修前)銀行
      (改修後)多目的ホール
所有者:岡山県
改修設計者:轄イ藤建築事務所/協同組合 岡山県設計技術センター
改修施工者:椛蝟{組、樺央設備、兜ミ山電機工業所、鰍ンのるガーデンセンター  


 この建物は、長野宇平治の設計により1922年に竣工した歴史的建造物であり、都市景観のシンボルと親しまれてきた歴史がある。RCの柱梁の間を45〜50cmの厚い煉瓦で埋めた重厚な外観に特徴がある。屋根はアングルリベット接合によるトラス構造でメインホールの大きな空間を飛ばし、その上にRCスラブが打たれている。
 この建物を、飲食も楽しめるコンサートホールとして再生するにあたり、耐震補強が行なわれた。良い建物を永く残すためには、その時代の要請に応え、人々が安全に快適に使い続けることが必要である。そのためには、耐震補強を施し各種の設備を更新する必要があるが、ここではメインホール内に4本の柱を設け、耐震要素としてだけでなく、機能変更に伴い追加すべき設備を集約する方法が用いられている。柱はあえて既存のデザインに同化させることなく印象的なデザインとして積極的に見せると共に、スピーカー施設・空調ダクト・スポット照明の収まりスペースとして大胆に利用されている。
 新設された4本のL字型の鉄骨メガ柱相互を既存鉄骨屋根構造の中に一体化して設けたトラスで結びラーメン架構を新設している。剛性の高い建物を、鉄骨で補強するには詳細な検討が必要であるが、同じ設計者の長野宇平治による同種の建物が阪神大震災で倒壊したことから、ここで用いられた補強方法のラーメン効果と鉛直荷重支持能力に期待することで、大地震時の倒壊を防ごうという思想と考えられる。
 さらに建物の正面を印象付ける4本のコリント式の柱も鉄骨の芯材で補強したうえで本体建物と一体化したほか、煉瓦壁にはグラウトミルク注入を行ない、さらにコーナー部や一部の壁面を鋼板補強するなど、さまざまな配慮が施されている。
 空調設備としては、従来の窓下にあるラジエター(直暖)スペースと床下の配管トレンチを利用し、大空間の効率的空調として居住域だけの空調を実現させれば、より省エネで効果的な空間が創造できると思われるので、さらなるリニューアルの機会があれば是非検討していただきたい。
 ホワイエなどの新築棟を増築し、外塀を取り除いて開かれた都市公園を整備するとともに、銀行建築が新しい機能を持って生まれ変わった好例と考えられる。