第11回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

立教学院諸聖徒礼拝堂

 礼拝堂は、立教大学池袋キャンパスに於けるシンボルゾーンを形成する、主要な建築であり1918年に建設されて以来、多くの学生、関係者の心のよりどころとして大切に使用、整備されてきた。その長い伝統、積み重ねられてきた情熱に支えられる事によって、今回のダイナミックな免震構法を核としたリフォームが行われたと言えよう。優れた計画は、必ずそのバックグラウンドとなる実現への意志が強固に、ゆっくりと醸成されて初めて可能になる事を、改めて感じさせてくれる。
 煉瓦造建物として日本で初めての免震レトロフィットの成功は、大学の周囲の建物の改修の先駆けともなり、歴史的景観の再生に向かう事が可能になったという意味でも評価できる。
 その施工においても既存建物の性状を良く理解しながら、各部分の補強と同時に全体として再生する事が周到に計画され、実施されている。
 又、今回の外壁の補修の為に、既に生産されていない「焼きすぎ煉瓦」の制作を韓国にまで求めて実現している事や、内部の小屋組みの補強に細い鋼棒のブレースによって目立たない配慮をする等、きめ細やかに丁寧な改修を施している。それらを含めて数々のディテールの工夫によって、全体にバランスの良い安定感を持った保全計画となっていると言える。設備の老朽化、陳腐化に対しても、冷熱源、給水配管、受水槽、受変電、照明、防災等の更新計画も十分に検討、実施され、長寿命化をも視野に入れた計画となっている。
 更に、立教大学を中心にして維持管理体制がしっかりと組織され、関連施設を含めて明確なコンセプトに基付いた継続的計画の一環である事が高く評価される。
 既に外壁に蔦が成長して、これまでと変わらない表情で佇んでいる姿を見ていると、私達が「時の経過」にどの様に関わって行く事が出来るのかを様々に考えさせてくれる。

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