15回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

名古屋商工会議所                                                                                                 

所在地 名古屋市中区栄2-10-19
竣 工    1967
用 途 会議所
所有者    名古屋商工会議所
設計者    鞄建設計
施工者    樺|中工務店
       椛蝸ム組
維持管理者 名鉄ビルディング管理

 この建物は、名古屋での日米市長・会議所会頭会議開催を機に昭和42年に建て替えられ、築後38年経過している。昭和36年に制定された特定街区の基準を利用し、周辺環境との調和に配慮された41mの高層ビルとして計画された。平面プランはセンターコア形式で、基準階の奥行14.4mのフレキシビリティに富んだオフィス空間を持つ。バランスよく配置された耐震壁により耐震安全性も高く、熱源負荷低減にも配慮されている。また、外装には擬石仕上げのPCaにガスケットによるガラス嵌め込みを採用し、シールの打ち替えを不要とするなど、細部にわたってメンテナンスの容易さと長寿命化に配慮した、当時としては先駆的な取り組みを行っている。維持管理においては、所有者の維持管理部門を中心に設計事務所、施工会社、管理会社が一体となって取り組み、情報共有と迅速な対応に努力されている。熱源更新においては、高効率・インバーターにて改修、空調も小区画制御も可能な可変風量装置に改修している。その他、変電設備更新、給排水管更新、OA専用電源の新設など既存を活かし、省エネルギーも考慮した計画的で無理のない改修を行っている。この改修は1996年から実施され、機能更新に加えて安全性向上のためのスプリンクラー自主設置も行っている。入居しているテナントも20年を超える長期に及ぶ事業所が60%を超えており、入居者に対する維持管理・情報サービスが行き届いていることをうかがわせる。時代の変化に対応し易く、維持運営にも充分配慮された当初の計画と高い品質の施工、中長期修繕計画に基づいて行われる着実な保守管理が、常に時代にあった価値を持つ建物として活かし続けている。
 現在、この建物の前面は、ケヤキ並木と白川公園の樹木が一体となって気持ちの良い緑陰を行き交う人々に提供している。ケヤキ並木は、商工会議所創立100周年記念時(1981年)に寄贈植樹したものが育ったものである。地球温暖化防止・環境配慮に対しても、建設当時から日射遮蔽による熱負荷低減に取り組むなど、先見的な取り組みとともに継続した改善の努力がなされている。
 「安全・安心・快適な環境で100年を目指す」とする所有者の考えが見事に実践されている建物である。