第14回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

三越本店本館

所在地 東京都中央区日本橋室町 1-4-1
竣 工    第1期 1914
    第6期 1964
用 途    百貨店、劇場
所有者    (株)三越
設計者    (株)横河建築設計事務所
施工者    清水建設(株)
維持管理者 (株)三越環境サービス                                                                                                 

 百貨店の老舗三越の本店本館として大正3年日本橋に最初に作られた第一期の建物は鉄骨カーテンウォール式煉瓦造で当時の先端技術を駆使したものであった。その時、階段式自動階段(エスカレーター)、昇降機(エレベーター)、スプリンクラー、暖房換気、更には、貨物用昇降機、金銭及び伝票用真空気力金銭送達機等々当時の社会の話題を奪う最新の設備が装備されて、下足預かり制という旧来のシステムと合わせて新しい東京の名所であったという。その後震災後の第3期の修復工事で三越劇場、昭和10年の第4期の増築で大吹抜空間が作られた。地下鉄銀座線との地下での連絡通路の設置もこの時期である。そして昭和39年の第6期の増築を終え、現在の72,000uの大百貨店の形に至った。

 大正12年の関東大震災では倒壊は免れたものの火災を含めて大きな被害を受けた。その修復の中で鉄骨煉瓦造から残った鉄骨を利用して鉄骨鉄筋コンクリート造に改められた。さらに最近では耐震改修促進法に基づいて、それぞれの時期の杭や基礎の方式の違いに合わせて、材料の強度や劣化についての調査が行われた。特にコンクリートについては建設当時の強度がそのまま維持されているなど良好な維持の状況が明らかになったという。

 大正3年以来昭和、平成を通じて長い間の事業の発展に重ねて、常にそれまでに築かれてきた資産を大切にしながら一貫性を持って増築を重ねてきた姿勢は評価に値する。現在計画している免震化工事では建物外観や機能を損なうことなく、地下1階より上の建物全ての部分を免震層で支える予定である。これによって震災時においては建物だけではなく商品についても健全化をはかり、短期間で復旧できる事を目標にしている。また地下1階にあった床の段差を免震工事にあわせて解消しバリアフリー化を進めている。省エネ活動も盛んでビル環境管理システムやポンプのインバータ化、節水・節電運動による省資源化廃棄物削減の努力等々積極的に推進をしている。

 これは建築主ばかりでなく維持管理者、設計者、施工者が一体となって、良好な人間関係のもと建物に対する愛着愛情を共有できている事によるものと思われる。そのことできめ細やかで長期的な適切な計画が立てられ、快適な環境が維持されていると評価できる。