第14回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

大阪女学院 北校舎・チャペル

所在地    大阪市中央区玉造2-26-54
竣 工    1951
用 途    校舎・講堂
所有者    学校法人 大阪女学院
設計者    (株)一粒社ヴォーリズ建築事務所
施工者    (株)竹中工務店
維持管理者 学校法人 大阪女学院

 大阪女学院の校門を入ると深い緑の木立とアメリカンモダニズム様式の北校舎、チャペルが創り出す美しいキャンパスが視野に飛び込んできた。

 昭和20年焦土の中で再開を諦めかけた学園関係者は、いつから入学試験を行うのかという父兄の声に後押しされながら、授業再開に向け教職員、生徒、父兄が一緒になって手造りでキャンパス再建に立ち上がった。この熱意が、昭和26年米国教会の援助を受けて建設された北校舎、ヘール・チャペルに結実し、この再建を「喜びと感謝と希望の根源」と受け継がれた学園関係者の心が、その後も絶える事無く続く維持・保全につながっている。

 戦後復興期のヴォーリズの作品であるこの建物は、施工にもその理念や主義が反映され、簡素ではあるが質の高い建物として今日まで生き続けてきている。その間、所有者である大阪女学院、一粒社ヴォーリズ建築事務所、施工者が三位一体となって運用管理計画を立て、計画にもとづく点検・維持修繕が丁寧に行われている。築後30年目に設備の充実、外装サッシュ取替えの大規模修繕が実施されている。50年目の200001年にかけては構造体の耐久性の維持更新として耐震補強工事と電気・空調設備、教育設備の更新が行われる等、新たな価値の創出、付加にも絶え間ない努力が続けられている。

 北校舎の耐震補強工事ではアメリカンモダニズム様式のオリジナルデザインを尊重し、既存外壁面にRC造の外殻フレームを新設する手法をとっている。この結果、オリジナルの垂直線を強調するデザインは更に力を持つことになり、チャペルと対となって様式美を創り出している。内装も当時の職人によって丹精を込め施工された人研ぎテラゾーの床や洗面カウンター、石膏レリーフなどを良く保存・再現している。設備の空調配管は天井高さが低いため、廊下横断をアーチ型で化粧してうまく納め、違和感を持たせないように工夫している。チャペル棟では、寒さ対策として冬場には座席の下部に取り外し可能なパイプヒーターを設置して瞬時に快適温度になる工夫がされていて違和感がない。

 この建物に注がれる関係者の深い思いが感じられ、これからも永く愛され生き続けると思われる素晴らしい建物であると評価された。