第14回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

大阪芸術大学 塚本英世記念館/芸術情報センター

所在地 大阪府南河内郡河南町大字東山469
竣 工    1981
用 途    大学、図書館、展示ホール、ギャラリー、AVホール、実験ドーム
所有者    学校法人 塚本学院
設計者    (株)第一工房
施工者    大成建設(株)
    日本電設工業(株)

維持管理者 近畿建物管理(株)

                                                                                                 

本建物は、単なる大学図書館の機能に留まらず、芸術に関する様々な情報を収集し、それを研究に使い、またそれを利用して新たな情報を発信できる施設として計画された。アートホールと呼ぶ5層吹き抜けの空間を核として、それを取り囲むようにして、図書館、展示ホール、AVホール、実験ドームなどを配置している。

 外壁だけでなく建物内部も壁や天井、ダクト、階段とふんだんにコンクリート打放し仕上げが採用されている。外壁では本実の打放し、内部ではアートホール螺旋階段の打放し、AVホールの照明や換気用のスリット入り直天井の打放しなど、普通では見過ごしてしまうような細部にまで、納まりに関する施工の細心の注意が払われている。

 竣工から23年を経ているが、内装及び外装とも打放しで精度の良い密実なコンクリートのため、殆どメンテナンスフリーで竣工時の状態を保持している。

 蓄熱槽を付帯したターボ冷凍機による最大需要電力のピークカット、給水管に硬質ビニールライニング鋼管を使用する等、建設当初より最新の設備をビルトインされている為、今日まで、大幅な更新投資を行うことなく維持運用されて来ている。建物全体が打ち放し構造の為、電気配線は金属管配線になっているので、その後の軽微な変更も、配線を入れ替えることで対応出来ている。その事により、その後のOA化に対する要求にも内装を損なう事無く、比較的無難に実施されている。

 情報及び芸術メディアの広範かつ急速な進化に柔軟に対応できる施設を具現化した高度な設計、それらを的確に実現した施工者の技術、及び長期にわたり地道に続けてきた維持管理と運営努力がひとつになって、この建築は現在まで多くのユーザーに愛情をもって有効に使われ続けて来ており、大学の発展にも大きく寄与している。

 従来から問題にされている排気ガスによる大気汚染や最近の中国の発展に伴う酸性雨が目立ち始め、これからのコンクリートの表面劣化が心配される。数年後には、改修計画の一部に劣化対策が検討されているようであるが、長寿命化のために期待したい。