第13回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

世界貿易センタービルディング



所在地:東京都港区浜松町2−4−1
用 途:事務所・バスターミナル・店舗
竣 工:1970年(昭和45年)
所有者:叶「界貿易センタービルディング
設計者:鞄建設計
     兜嵩。構造力学研究所
施工者:鹿島建設
維持管理者:叶「界貿易センタービルディング

 世界貿易センタービルディングは「世界貿易と交通に関するセンター」として1970年に完成した。霞ヶ関ビルに続いて東京で2番目に建てられた超高層ビルである。超高層ビルとしてはその足元にモノレール、JR、地下鉄などにつながるコンコースやバスターミナルなどの公共交通機能を持つ数少ない複合機能超高層ビルである。33年の長きにわたってターミナル乗降客を含む一日10万人という膨大な人々に休みなく使われ続けてきたが、未だに建てられた当時と変わらない佇まいを見せ続けている。外壁の特徴あるこげ茶色のアルミパネルは浅田式自然発色仕上げであるが、年に3回の掃除によって現在も建設当時の品質をほぼ保っている。
 このビルの特筆すべき特徴は一番目にその維持保全体制にある。竣工後10年に中長期修繕計画を立案、「快適性、機能性、安全性」をモットーに長寿命化を図るために所有者、設計者、施工者三者で月例の維持保全会議を開催し続けている。ビルの管理を他社に委託せず所有者の管理部門が直接各専門会社を統括することで木目の細かい維持保全活動を可能にしている。その結果、現在でも入居者の6割は建物竣工時からのテナントという素晴らしい状況が見える。その後も定期的に調査や診断を行い、1990年の20年目に物理的劣化と並んで社会的(情報化)劣化に対する対策を第一次リニューアルとして開始した。40年目の2010年には第二次リニューアルが計画されているなど、長寿命化に対する堅実な考え方が伺える。
 二番目の特徴は当初の計画の妥当性である。当時としては徹底した基準モデュール、適切な奥行き、フレキシビリティの高いセンターコア方式、そして何よりも色々な需要の変化、社会環境の変化に耐えられるのが余裕のある設備スペースである。特に当時としては画期的な大きさの電気シャフトは配電方式の切り替えやIT化対応を容易にしている。
 三番目に、今回のリニューアルの中に見える省エネ、IT化方針の適切な時代性である。現代のテナントのニーズを先取りしたITサーバーセンターは不要になった電話交換機室を転用したという。そのセキュリティ管理も十分である。全館光LANや事務室のIT化対応はいうまでもない。低層部分屋上に太陽光発電設備(80kW)とともに設置されたガスタービン・コージェネレーション・システム(1500kW)は大幅な燃料費削減の効果だけではなく、大幅な二酸化炭素の排出量削減を果たしている。
 所有者、設計者、施工者の関係者全員の、この建物を大切にしたいという思いを感じさせるロングライフビルである。