第13回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

新青山ビルヂング



所在地:東京都港区南青山1−1−1
用 途:事務所・店舗・駐車場
竣 工:1978年(昭和53年)
所有者:三菱地所
     社団法人 日本獣医師会
     社団法人 東京都獣医師会
     金原 尚子
設計者:且O菱地所設計
施工者:滑ヤ組
     東光電気工事
     新菱冷熱工業
     斎久工業
維持管理者:三菱地所梶@                                               

 新青山ビルヂングの竣工は昭和53年10月、同年に竣工された建物には八重洲ブックセンターや成田空港等がある。田中内閣は4年前に退陣していたが、未だ列島改造の息吹が消えている社会ではなかった。
 丸の内の整然とした街並みの中に堂々としたビルを幾つも持つ三菱地所が、多少雑然とした副都心の渋谷、新宿方面に向かって246号線に沿って進出してきたと受け止められた訳で、当時の青山地区にはなかった幾つもの特色を提供し、マスコミにも話題となった。神宮外苑と青山霊園という都内でも有数のゆったりとしたオープンスペースの環境の間に、23階建ての颯爽としたツインのオフィスビルがそびえ建ったのであった。
 今でこそ商業とオフィスの複合ビルは珍しくないが、新青山ビルヂングは現在のビルの流行を25年前に先取りしていた。特色の例をあげると、周辺の街並みと溶け込むよう配慮した広場(人工地盤)、地下鉄銀座線と半蔵門線の駅に接続する地下鉄広場、乗降客、オフィス従業員、周辺住民のための商店街、また環境問題やエネルギー問題に積極的に取り組む例として、地域冷暖房、中水施設の設置があげられる。余裕を持ったすっきりした配棟は、現在でも周囲との景観と調和を保っている。
 こうした先を見た余裕は、その後地下広場を地下鉄大江戸線と接続することを可能にし、新青山ビルヂングを現在でも地域に貢献する中心施設としている。
 維持保全の状況を見てみると、この建物は根本をやり直すリニューアルは必要とされていない。しかし、大気汚染による汚れは防げず、定期的に外装の洗浄を行っている。また、外装シーリングの改修も実施されている。
 内装面を見ると、商業店舗共用部の改修も行われているが、店舗施設としては当然の流れであろう。
 設備面では、オフィス内部の梁背をすべて600oに抑え、梁下でダクトや配管の取り回しを可能とした構造方法をとっていたため、中廊下式のオフィス形状を大部屋形式に改修するなど、時代の要請に柔軟な対応が可能であったこと、設備機器設置スペースも比較的余裕をもって計画されていたため、更新・改修が無理なく行なわれたことなど、当初の設計の先見性を高く評価したい。OAフロアの導入に際して、空調システムを改修し逆に天井高を高くし、高効率照明器具を積極的に採用し照度を向上させるなど、室内環境の改善にも常に取り組んでいる。
 25年間先進性を保ちながら機能更新もしてきた新青山ビルヂングは、緑豊かな環境と交通の接合点という利便性に恵まれた青山の中のリーディングビルとして、今後何十年も246号線を通る人に、そびえて見えることとなるであろう。