第13回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

ザ・シンフォニーホール



所在地:大阪府大阪市北区大淀南2−3−3
用 途:コンサートホール
竣 工:1982年(昭和57年)
所有者:朝日放送
設計者:大成建設
施工者:大成建設
維持管理者:朝日放送

このホールは、現在の日本でも数少ない クラシック音楽専用のコンサートホールとして二十年前に大阪に誕生した音楽ホールである。 このホールは当時のホールの計画としては、斬新な試みが数多くなされている。
 敷地の条件としては、決して広くない敷地に、地下駐車場、グランドホワイエ、音楽ホールの三つの用途を立体的に積み重ねた構成で、しかも余裕のある楽屋と練習室を確保した上で、アリーナ式の1700席余りのホール空間を造りあげた努力は特筆すべきものがある。さらにそのホールはステージの奥にも客席を設けたアリーナ式のホールとしては、我が国で最初のホールではないかと思われる。
 しかも、計画当初から残響時間を2秒と設定したこのホールの音響性能の維持を第一優先課題として、音響反射体・拡散体の維持保全、客席の木製椅子の張り替え及び発生音対策を考えた上での設備改修などが、極めて着実に行われており、今に至るまで音響性能を変えずに運営していることについて評価したい。
 また、コンサートの合間の休憩時間を充実した実りある時間とするべく、工夫されたロビーでの軽飲食の空間も、3階グランドホワイエ喫茶コーナーや2階クロークの拡張によって更に違和感の無いかたちで年々充実されており、最初、計画された意図が間違っていなかった事を示しているのではないかと考える。ただ、女子便所のスペースなど当初の見込みから若干ずれた部分もあるが、増設により違和感なく対応している。
 残響時間 2秒のホールを実現するについては1/10の模型等による数多くの実験を経て、実現に至ったものと聞いているが、その努力と、その残響時間を竣工以降二十年以上変えずに維持してこられた維持管理者の方々の情熱に深く敬意を表したいと思う。
 建物の維持管理体制については、所有者、維持管理者、施工者が維持保全の面で綿密な2期に亘る維持管理計画に基づき 常駐体制で臨み、音楽ホールと言う特殊性も考慮にいれて、常にトラブルに対応できるような体制を組んでいる事と、設備的には当初計画の機器設置スペースに余裕があり、無理のない機器更新が行われている事がこのホールを永く生き続けさせてきた原因ではないかと考えられる。ただ一つ残念なのは身障者対策の面での改善が多少おろそかになっている点であろう。
 今後も、歴史の年輪を積み重ねて 大阪の音楽文化の中心として、40年〜50年に亘って、次世代に引き継いで行きたいコンサートホールの一つである。