第11回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

フロインドリーブ

 1929年、ヴォ−リス設計により竣工したゴチックスタイルの旧神戸ユニオン教会が、レストランを併設した地元のベーカリ−として再生された。旧教会は第二次大戦で被災、外壁は被災を逃れたものの屋根の主要部、特に構造上の特色となっていたハンマートラスは瓦解、内部の仕上げ材もかなりの部分で損傷を受けたという。その後屋根面はシーザートラスとして、又屋根材、内部の仕上げ材は代用品で修復され、1992年まで教会として使用されてきた。1992年教会が移転したあと、不動産物件として売りに出されて、1995年の阪神大震災に遭遇、ダメージを受け空家のまま放置されていたところ、同震災で営業拠点が被災したフロインドリーブ上原ご夫妻が、ご夫妻のゆかりの教会をご購入、新たな事業の拠点として修復再生されたのが現在のフロインドリーブである。
設計図もない中、再生に当たっては現地での調査と実測、残された僅かの資料を下に、修復と復元と改修が微妙に関わりあいながらも、全体として、旧神戸ユニオン教会のイメージが継承されるように努めている。特に内外観を特徴付けている外壁、各部のアーチ、開口部の処理は設計・施工とも入念で、また新たに付加された耐震壁も店舗の奥に隠されていて目立たない。 2階のレストランに付加された室内機も原作の雰囲気を壊さないようにデザインに工夫が施されている。又、エントランスホールから2階へ至る階段、レストランとして転用された2階の礼拝堂、店舗として活用されている1階の元食堂部分など、各所から原作への配慮が窺い知れる構成である。
 ハーフティンバーを外観の特色とする正面右手の牧師館内部が二期工事に残されている、空冷式ヒートポンプパッケージの外部冷媒配管が気に掛かる、礼拝堂の祭壇がレストランへのサービス動線になっている、など残念な点もあるが、行政によって保存されている幾多の建築の中で、個人の情熱とぎりぎりの資金で支えられ、歴史が継承された成果は何にも替えがたい。過去へのセンチメンタリズムを越えたダイナミズムがこの建物に新たな息吹を与えて、新たな歴史への出発点となっており、BELCA賞のベストリフォームに相応しい成果と評価された。

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